阪神が7日、90年巨人の9月8日を更新し、2リーグ制後最速の優勝を決めた。

虎番1年目で入社2年目の私は、いきなり貴重な経験をさせてもらった。

そして、チームの中には「最速優勝」の直前に大きな経験をし、貢献した新人右腕がいる。育成ドラフト3位ルーキーの早川太貴投手(25)だ。

優勝マジック14で迎えた、8月27日DeNA戦。7月に1軍昇格と初登板を果たした男が、この日はプロ初先発のマウンドに上がった。

球団の育成ドラフト出身投手では初先発。先発に限らず球団の育成出身では初となる、ルーキーイヤーでの勝利を挙げた。

この日の1勝がなければ、最短優勝できていなかった可能性もあり、今回のリーグVにおいても重要な意味合いを持つ1勝となった。

そんな早川は昨季、くふうハヤテに所属。その前は国立の小樽商大を卒業後、北広島市役所で勤めていた。

ドラフト指名後に北広島市役所を訪問し記念撮影を行った阪神早川(後列右から5人目)と、同市役所の職員ら(北広島市役所提供)
ドラフト指名後に北広島市役所を訪問し記念撮影を行った阪神早川(後列右から5人目)と、同市役所の職員ら(北広島市役所提供)

公務員としての働きぶりは? 元同僚の2人が明かした。

早川の就職後の主な担当は、生活に困窮した市民への援助などの対応。保健福祉部福祉課で働き、窓口で生活保護受給者の相談を受けるなど、市民に寄り添った。

業務と並行して野球を続けており、午前3時に起床して朝練を行う日もあった。それでも眠そうな顔をすることは全くなかった。練習後に市役所に到着。8時45分の始業から、任された仕事をコツコツ、1つ1つ黙々と処理していた。

元上司の奥山衛(まもる)さん(59)は「寝坊して遅刻することもなく一生懸命でした」と振り返る。

業務後は同市役所職員らが所属する「職労野球部」(軟式)で、夏場は月曜日以外の平日に約2時間練習。野球→仕事→野球という日も少なくはなかった。野球にも仕事にも全力。チームメートで親交の深い今西草太さん(26)は「ストイックな人でした」と明かした。

阪神早川(左)と北広島市役所の今西さん(北広島市役所提供)
阪神早川(左)と北広島市役所の今西さん(北広島市役所提供)

職場には体づくりのため、ブロッコリーや鶏胸肉などを自分で調理して持参。ハードスケジュールで、今西さんには弱音を吐くこともあったが、周りにつらい顔は見せなかった。

ともにサウナに行って「これがうまい」「あのテレビが面白い」などと会話し、リフレッシュできる時間を過ごしていた今西さん。印象に残っているのは、22年の9月に「全日本自治体職員等野球選手権大会全国優勝大会」に出場したときのこと。全国大会でプレーし「本気で楽しいと思ってくれた。一緒にやるのが楽しかった」と懐かしんだ。

北広島市の職労野球部時代に投球する阪神早川(北広島市役所提供)
北広島市の職労野球部時代に投球する阪神早川(北広島市役所提供)

23年ドラフトも候補に挙がっていたが指名漏れ。奥山さんらに「公務員の仕事を絶って、野球を一生懸命やりたい」という旨の話をした。決意を感じた、市役所の職員たち。「頑張れよ」と送り出し、ほとんど全員がくふうハヤテ所属後の成績に注目していた。

早川は北の大地に、大きな応援団が味方としている。【阪神担当=塚本光】

阪神早川が働いていた北広島市役所(北広島市役所提供)
阪神早川が働いていた北広島市役所(北広島市役所提供)