冷たい風が吹いてきました。好評だったあの企画が4年ぶりに帰ってきました。“オバQ”の愛称で親しまれるDeNA田代富雄1軍チーフ打撃コーチ(65)の真冬の怪談です。ひんやり…いやゾッとしますよ…。【取材・構成=島根純】

DeNA田代富雄コーチ
DeNA田代富雄コーチ


◆風もないのに 昔の(ファーム施設のあった)長浦は結構、出たんだよ。俺が2軍でコーチをやってた頃だ。練習場の横に夏みかんの木があってな。夜になると、なんか、揺れる。練習が終わって近くのラーメン屋で1杯やってた。一緒に飲んでた2軍マネジャーの大川に「あの木、なんかあるなぁ」って言ったら「気のせいですよ」って笑われてな。「そうかぁ?」なんて言いながら、夜は更けていったんだよ。で、ほろ酔いになって店を出てよ、合宿所に帰ったんだ。で、その夏みかんの木に近づいたら、ガサッ、ガサッて大きく揺れたんだ。風なんか吹いてねぇ。2人で顔見合わせてな。「田代さん…」「おう…」。酔いなんかさめちまったよ。あそこは、いたな。

◆誰かいる やっぱり、遠征先ってのも多いんだよ。牛島監督の頃だったな。大阪の宿舎に泊まったんだよ。俺の部屋の方に行こうとしたら「ウッ」って胸が詰まってよ。なんだか空気が嫌なんだ。山口先生って理学療法士の先生もいたんだけど「田代さん、これヤバイです」って言われて、完全にビビった。部屋に入っても、なんかよどんでる。嫌だなぁ、嫌だなぁって思いながら、早く風呂入って寝ようと思ったんだ。浴室に入って、シャワーからお湯を出した。で、髪を洗おうと思って頭にぶっかけたら、背後に人の気配があるんだよ。

後ろに、いる。

やべえ。下向いたら、それが見えちまう。気づかないふりして、ずっと上向いたまんまシャワー浴びたよ。流し終わって、意を決して振り向いたら誰もいなかった。もう、怖くなっちまってよ。とりあえず部屋から逃げ出したよ。

◆2人で金縛り 広島でもあったな。当時の宿舎で、誰かが幽霊を見たっていうからよ。ビビって、山下さんの部屋に行って「寝かしてください」って頼んだんだよ。ツインだったから、空いてる方で寝かしてもらった。眠りに落ちて…真夜中だ。息苦しくて目が覚めた。

意識はハッキリしてんだけど、体が動かない。「どうにかしないと」と思うけど、指の1本も動きやしねえ。動け、動けって冷や汗ダラダラかきながら、どうにか動いたんだな。ベッドからドォォォーンって転がり落ちた。慌てて隣で寝てた山下さん起こしてよ。そしたら寝ぼけまなこで「そんなの大丈夫だろ!」って怒られてな。でも、それで安心して、そうだよなって思いながらもう1回寝たんだ。翌朝。山下さんが血相変えて俺を起こしてよ。「お前があんなこと言うから、俺も金縛りにかかったよ…」って。2人して、そんなことあるか?

◆朝方の訪問者 最後は名古屋だ。現役時代、ホテルで寝てたんだ。そしたら、コンコンってノックする音で目が覚めたんだ。まだ3時、4時だぞ? 誰だ? って思ってドアの前まで行ったんだ。のぞき穴を見たら、ホテルの浴衣を着ている人が立ってる。でも、顔が分からないんだよ。うまく言えねえけど、ぼんやりしてる。

誰か起こしに来たのかなとか、カギかけたよなとか、いろいろ考えて、もう1回、のぞいたんだよ。次は、ハッキリ見えた。人だってのは分かるんだけど、顔が、ない。叫んだね。「ウオオオオオオオ」って。そしたら、スッて消えた。ドアを開けたら、誰もいない。慌てて隣の先輩の部屋に飛び込んだよ。先輩は「田代、お前、すごいうなされてたぞ。『うううぅ…うぅ…うううぅ…うぅ』って隣の部屋まで聞こえてきたからな」って言うんだ。でもよ、俺はぐっすり寝てたんだぜ? そのうめき声、本当に俺のだったのかな…?


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