昔と今が隣り合わせなのも、山手線の魅力だ。全30駅で最初に開業したのは、1872年(明5)の品川駅。そこから内回りで1駅、今年3月、49年ぶりの新駅として高輪ゲートウェイ駅が誕生した。程近くにある芝浦中央公園は、都心では数少ない、ボール遊びもできる場所だ。

 
 

新駅ということもあり、時代の最先端を走る。駅構内のコンビニは無人。商品を手にして、電子決済で支払いを済ませる。AIがフル活用され、駅員はバーチャルキャラクター。店舗情報や乗り換え案内を尋ねると、4カ国対応で答えてくれる。

近未来の駅から公園までは徒歩15分ほど。出口は泉岳寺方面の1つしかないため、ぐるっと回り、線路をくぐって海側へ出る。24年には港南側の出口も新設される予定で、遠回りせざるを得ないのも新駅ならではだ。高層ビル群を歩き続けると、雰囲気が一変し穏やかな芝生が広がる。芝浦中央公園は都心に住む人々の憩いの場所となっている。

1980年(昭55)、東京都下水道局芝浦水再生センター内の設備の上に作られた、人工地盤の上に開園した。15年に新たに緑地も整備され、多いときには1500人ほどが訪れる。ほとんどは家族連れで、テントを張ったりとピクニック感覚で休日を楽しんでいる。敷地面積は約4万5800平方メートル。東京ドームより一回り小さいほどの広さだ。子どもが多く訪れるため、安全に十分配慮をすれば、軟らかいゴムボールを使った運動ができる。

土曜の昼下がり、キャッチボールをしていた男性2人に声をかけた。平日は付近の企業で働くサラリーマンだった。初めて公園を訪れた2人だったが「普段からキャッチボールをやっている人を見ていたので、ここならできると思っていた」。会社の草野球チームに所属している。大会に向け、体を動かせる場所として利用していた。

公園からは東京タワーや六本木ヒルズも見える。この立地でボールを使えるのは実に貴重だ。会社員の男性は「ありがたいです。仕事終わりにも軽くできそうですね」と笑った。

公園管理者の男性は「ボール遊び禁止の公園が多く、家の前の道路でやっている人が多い。公園は本来、思い切り体を動かせる場所。そういった場を少しでも与えたい」と力を込めた。危険な場合は注意をすることもあるが、自宅ではできない遊びをする人々を優しく見守っている。

親子でキャッチボールをしたり、敷地内のドッグランでは犬が縦横無尽に駆け回ったりしている。ウッドデッキでは料理を並べて友人と楽しく食事を取るグループもいた。港区内にありながら、都会の騒がしさを忘れられる場所。ちょっとボールを投げてみたくなったら、山手線に乗るのもいい。【湯本勝大】