プロ10年間、駒月仁人捕手(28)が唯一放ったヒットの感触は残って、ない。「まったく芯に当たっていませんでしたから」。19年8月13日オリックス戦(メットライフドーム)、三塁線へのボテボテの当たりに「もう必死で走りました。ここしかないと思って」。この年、1軍に定着しながらもポジション柄、なかなか出場できずにいた。代打で出場して4打席目、初めて点灯させたHランプ。得点者としてベンチに戻ると「お前らしいヒットだな」とみんなが喜んでくれた。

19年8月、オリックス戦でプロ初安打を記録する西武駒月
19年8月、オリックス戦でプロ初安打を記録する西武駒月

捕手出身ながら、ドラフト指名後に外野手登録を告げられて5年間、芽が出ずにいた。小学5年生からマスクをかぶってからずっと捕手。「試合に出られるならどこでもいいです」と言ったが、踏ん切りがつけられずにいた。ファームでの試合、左翼を守りながら配球が頭をよぎる。「きっとそっち(捕手)への思いがあったから、自然と考えてしまっていたんだと思う」。5年目を終えたとき球団から「捕手でやってみるか」といわれ即答した。

西武駒月の年度別成績
西武駒月の年度別成績

捕手転向3年目の夏、ついに手にした初安打の記念球は両親に渡し、実家に飾られている。ここ2年は1軍登録がなかった。今年の8月に一般女性と結婚する際にも「もしかしたら今年で終わりかもしれない」と伝え覚悟していただけに、戦力外を通告されたときは納得して受け入れた。今は、同時に話を受けた「ファームブルペン捕手兼スコアラー」に向け勉強中だ。

スコアラーとしては、駒月にとって新たな挑戦になる。「キャッチャー出身のスコアラーは(今のチームに)いないので、そこは積極的に出していきたい。キャッチャー目線を大事にしながら、チームの力になれるよう、仕事をしていけたら」。捕手ができなかった5年も、捕手として挑戦した5年も、新たなステージの糧にする。【西武担当=栗田成芳】

21年西武退団選手
21年西武退団選手