ロッテ高浜卓也内野手(32)は絶対にその感触を忘れない。だって。
「完璧でしたね。僕、基本的に完璧に打たないと本塁打打てない打者なので。みんなみたいに、フワフワ~って入らないので」
今年7月27日、エキシビションマッチで訪れた甲子園。4番一塁で起用され、阪神藤浪のカットボールを右翼席へ飛ばした。腰の痛みが再発し、現役引退を覚悟したのは数日後。最後の1発になった。
横浜高時代に甲子園で優勝し、プロ生活もドラフト1巡目で入団した阪神から始まった。遊撃手として、壁は高かった。レギュラー鳥谷敬、当時27歳。
「全盛期、かなうわけない時です。それでも超えなきゃ1軍に上がれなくて」
自身は膝を痛めていた。背中を追うどころか、本人に会えるのはシーズンオフの納会くらい。「早くお前が出てきてくれないと、俺がメジャー行けないじゃん」。冗談交じりでも期待はうれしかった。
高浜がロッテに移籍し10年目、鳥谷もやって来た。たわいもない会話ができる関係になれた。鳴尾浜で朝7時から鍛えているのを目撃した昔と、同じままの野球への姿勢に圧倒された。戦力外通告を受け、連絡した。「まさかまた一緒にできると思ってなかった。一緒にできてよかったよ」。いつもの声に励まされた。
一般就職を考えている。「後輩たちに道を開いてあげたいです。安心して野球に打ち込めるように」。鳥谷や多くの人に支えられた。自分も誰かのために。心から思える。「あれだけ追いかけた先輩と同じ年に引退なんて」。不思議な縁を感じながら、ユニホームを脱ぐ。甲子園のダイヤモンドを回り終えると、ホームで5番鳥谷が待っていた。「やったな!」。あのハイタッチも一生忘れない。【金子真仁】







