MLBオーナー陣と選手会の新労使協定を巡る折衝が暗礁に乗り上げ、昨年12月2日からロックアウトとなった。オーナー陣の意向で、メジャーに関する全球団の機能が停止となり、トレードやFA(フリーエージェント)なども凍結された。MLBの労使交渉は、どうしてもつれるのか-。その背景を探った。
◇ ◇
労使闘争である以上、いずれかが弱腰になった時点で、その姿勢はおそらく決定的な弱点となる。だからこそ、駆け引きは避けて通れない。ただ、ロックアウトに踏み切った際、ロブ・マンフレッド・コミッショナーが発した一連の言葉は、おそらく簡単に見過ごせるものではない。
「この厳しくも大事なステップが、公式戦中止を意味するものではないと思っている」
16年オフに締結した労使協定は5年間有効で、21年12月1日に失効することになっていた。そのため、シーズン中から双方が新協定に関する話し合いを重ねてきたものの、期限までに妥結する可能性は低く、オーナー陣がロックアウトに踏み切ることは確実視されていた。それでも、マンフレッド氏は「合意することについて楽観視している」とコメントし、ロックアウトが「大事なステップ」と、交渉過程の一部であることを認めた。
ロックアウトになったことで、メジャー40人枠内のFA、トレード交渉が凍結されるだけでなく、選手は本拠地やキャンプ施設、事務所などへの立ち入りは一切禁止された。つまり、選手会側に公然と圧力をかけたわけで、同氏は今春の公式戦に影響を及ぼさない限り、やむを得ない処置であると正当化した。極端な表現をすれば、機構と経営者側が高をくくって「けんかを売った」と受け取られても仕方なかった。
今回の争点は、ぜいたく税の対象となる総年俸の上限額、フリーエージェント(FA)取得期間、年俸調停の変更など、多岐に及ぶため、簡単に合意することは困難とみられていた。その一方で、双方の不信感が最大の問題であるとも指摘されてきた。
もし、機構とオーナー側が、選手会側の足元を見て見くびるかのように「けんかを売った」とすれば、折衝はさらに厄介になる。通常、一般社会の労使紛争であれば、賃金を支払う側と受け取る側との「労使」の構図が、明確に存在する。だが、MLBの場合、少しばかり異なる。世界中から集まった最高峰の選手がグラウンドでプレーするからこそ、興行が成り立ち、経営陣は多額の収入を手にする。選手側に「雇われ」との感覚はなく、収益の平等分配を主張するのが根本姿勢。「売られたけんか」を買う可能性は高い。
04年、NPBでは巨人渡辺恒雄オーナー(当時)の発言を機に、史上初のストライキに突入した。今回のマンフレッド氏の一連のコメントはそれほどの暴言ではない。だが、その内容、口調とも、選手会側との温度差を示していたことは間違いない。【四竈衛】




