巨人キャンプ取材が終わり、メイン球場をそろそろ離れようと思っていると、女子選手が出て来てアップをはじめた。背番号「18」の吉安清さんと「7」山下陽夏さんのキャッチボールを見て「しっかり投げてる。いい投げ方してるな」と、率直に感じた。

S班の練習に参加した女子野球チームに声をかけ、笑顔を見せる巨人原監督(右)(撮影・たえ見朱実)
S班の練習に参加した女子野球チームに声をかけ、笑顔を見せる巨人原監督(右)(撮影・たえ見朱実)

フォームがいい。基本ができている。ジャンパーを脱ぎ、キャッチボールに移る時の準備の仕方にも、真剣さが出ていて好感が持てた。しっかり相手の胸付近をめがけて投げており、プロの選手も参考にできるレベルにあった。

キャッチボールする吉安(撮影・河田真司)
キャッチボールする吉安(撮影・河田真司)

このキャンプには2人のほかに女子野球1期生として島野愛友利さん、金満梨々那さんも参加していた。巨人は新しい試みにトライしている。プロ野球の球団で女子チームをつくっているのは西武が20年4月に「埼玉西武ライオンズ・レディース」を、翌年2月に阪神が「阪神タイガースWomen」を創設した。巨人が昨年12月に発表し3番目となった。

キャッチボールする島野(撮影・河田真司)
キャッチボールする島野(撮影・河田真司)

今までも何度か取材を受けた際には発言してきたが、女子チームの普及は、野球人口減少防止に大きな効果を持つと強く感じている。それは、家庭内での母親の存在がきわめて大きいためだ。最近、少年少女が野球チームをあきらめる理由として、道具面での経済的負担、勉強との両立などがあるが、見過ごせないのが保護者による送迎、当番制などの負担があると指摘されている。

この保護者の負担を考えた時、母親がいかに野球を身近に感じ、自分の子どもに野球を続けさせてやりたいと考えるかが、非常に大切になる。少子化時代に入り、その視点がますます重要だと切に感じる。

となれば、母親が野球の楽しさや、野球を通じて学べると実感できれば、多少は時間がかかっても、最も確実なやり方になる。今、野球に取り組んでいる女子選手がやがて母親になった時、その実体験が子どもを野球を通じて育てようという動機に変わる。

そのためには、プロ球団が足並みをそろえて女子チームをつくり、球団のバックアップを受けながら、やれる範囲でリーグ戦を目指してはどうか。たとえば、親子ゲームのように、女子野球の試合後に、公式戦を開催すれば、野球ファンが女子野球を観戦しやすくなり、それは双方にメリットがある。

守備練習する山下(撮影・河田真司)
守備練習する山下(撮影・河田真司)

女性の力、とりわけ母親の影響力はこれからますます大きくなっていくと感じる。女性が野球をする時代。普通に女性がグラブを持ち、硬式を握る風景が日常になるのは、もうすぐそこまで来ている。

私は吉安さん、山下さんのキャッチボールに大きな可能性を感じた。(日刊スポーツ評論家)

捕手練習する金満(撮影・河田真司)
捕手練習する金満(撮影・河田真司)