捕手にとって結果がすべてではない、この時期はいろいろ試せることがある。巨人は打力で出場機会を取ってきた大城卓三捕手(29)と、原監督が新たに期待を掛ける岸田行倫捕手(25)で正捕手を争っている。結果が欲しいことも理解できる。だが紅白戦でのリードを見て、もっとチャレンジすべきという場面が多かった。

ともに2球で追い込みながら、3球目は外角にボール球で外して様子を見るシーンが目立った。3球勝負を含め、他の選択肢を幅広く持てるはず。大城は3回無死一塁で石川に0-2から図ったように外角に外した。フルカウントまでもつれ、空振り三振で二盗も刺し、併殺としたが結果オーライとしてはならない。余計な球数を要しているとも言える。

巨人紅白戦 3回表紅組を抑え、グラブタッチを交わす赤星(左)と大城(撮影・河田真司)
巨人紅白戦 3回表紅組を抑え、グラブタッチを交わす赤星(左)と大城(撮影・河田真司)

岸田もその裏の守備で先頭の増田大に0-2としながら外角に外して、その後もカウントを悪くして結局、歩かせた。この回は大量4失点で逆転されたが、先頭の四球の内容が流れを悪くしたことを自覚しているかだ。

2人以外にも2年目の山瀬が5回に左腕横川に対し、0-2から外角ボール気味を要求。直球がストライクゾーンぎりぎりに収まり、秋広から見逃し三振を奪った時に横川にジェスチャーで両手を広げ「もっとボール球でいい」と伝えていた。結果論で良しとせずに、捕手としての意思を伝えるのはいい。だが、自分の中でも「3球勝負でこういう配球でも良かったかもしれない」という気づきがあったか。

私自身が現役の若手のころに、トライできていたかと言えば、決してそうではない。レギュラー定着する少し前ぐらいからできるようになったが、もっと早く試しとけば良かったという思いは今もある。一方でライバルとなる存在は強く意識していた。自分の長所をアピールする、ライバルとの違いを示す、そしてチーム内の相手を絶対に倒すことは考えていた。

初回2死一塁で4番岸田に対し、大城は5球中1球しか内角を要求しなかった。もちろんぶつけてはダメだが、同じ正捕手を争う立場として、絶対に抑えるという意識は希薄に映った。育成から支配下に昇格し、プロ2年目で1軍キャンプに参加している喜多は5回に山瀬に対し、2ボールから内角を要求。3ボールになっても、さらに内角を続け、結果四球だったが、むしろ戦っている感はあった。

今は失敗をしてもいい。捕手はこの時期に試して、得た学びが後に財産となって返ってくる。(日刊スポーツ評論家)