WBCに挑む侍ジャパンのメンバー30人が決定した。連載「侍の宝刀」で、30人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる。

1日、WBC公式球でキャッチボールをする宮城
1日、WBC公式球でキャッチボールをする宮城

オリックス宮城大弥投手(21)が、大先輩の言葉を胸に世界に挑む。21年に2・51、22年に3・16の年間防御率が示すように、シーズン中の宮城は自滅とはほぼ無縁。味方が失策で招いたピンチにも崩れないのが、プロ2年目から開幕ローテーションを守る左腕の真骨頂だ。その長所が、侍ジャパンへの選出につながった。本来の実力を発揮すれば必ず、宮城は世界一への大きな戦力になる。

侍ジャパンの合宿に参加する前、宮城はWBC使用球への戸惑いを口にした。オリックスの宮崎キャンプで行われた2月14日の紅白戦では太田、紅林に1発を浴びて3点を失い「まだ少し、慣れきってない部分が出ているなと感じました」と明かした。不安解消に手を差し伸べたのが、先輩の平野佳だった。

17年WBCで代表経験があり、3年間メジャーのマウンドに立った平野佳は、WBC使用球とNPB公式球の違いに苦しんでいた後輩左腕の悩みを理解した上で、ボールに合わせに行くことで生まれる弊害を懸念。「いつもと同じようなフォームで同じような投げ方をして、NPBのボールがまっすぐ行ってWBC球がシュートするなら、まっすぐに変えよう、じゃなくて、それをそのままシュートとして投げた方がいいよ」と宮城に伝えた。

宮城の22年11月強化試合成績
宮城の22年11月強化試合成績

国際大会、メジャーを知る平野佳の助言はコペルニクス的な発想だった。「宮城の投げているカーブの曲がりが違ったら、このボールはそういう投げ方をするんだと思って。それで、途中でNPB球でも投げて感覚を狂わないようにした方がいい。WBCで活躍してほしいし、世界一になってほしいけど『WBC球はこんなんだ』って思った方がいい」。ボールを操るのは投手であって、ボールに操られるようでは意味がない。普段使わないボールを投げて普段と違う変化をするなら、逆にそれを利用できるように見方を変えるべき。自分の投球を見失うな、という思いからだった。

宮城という投手の中に、先代の侍の経験が息づく。侍ジャパンのバトンが渡され、世界に挑む力に変わる。【堀まどか】