2024年「ガーナ甲子園」表彰式の模様(提供:JーABS)
2024年「ガーナ甲子園」表彰式の模様(提供:JーABS)

国際協力機構(JICA)在職中に一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構(J-ABS)を立ち上げた友成晋也氏(62=ナイジェリア代表監督)は、20年にJICAを早期退職し、同事業に専念するようになった。核となる構想が「アフリカ55甲子園プロジェクト」。アフリカ54カ国と1地域それぞれにおいて、甲子園大会のようなイベントを創設し、人材育成の場を創ろうと試みている。元巨人、ヤンキースの松井秀喜氏(52)の協力も得て、壮大な夢に挑み続ける野球人の話、最終回です。

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21年8月。友成さんはニューヨーク郊外のジョン・F・ケネディ空港に降り立った。巨人やヤンキースで活躍した松井秀喜さんと会うためだった。松井さん関連の書籍28冊を読み込み、関係者を通じて誠意を伝え、面会の約束を取り付けた。

「私の理念に共鳴していただけて、かつ影響力のある方は松井秀喜さんしかいないと思いました。松井さんは甲子園で5連続敬遠されながら、一切不満を言わず、ボール球を見送りつつ、試合後も潔く負けを認めました。こういう選手になろう、目指そうと伝えていきたいのです」

友成さんの要請を快諾した松井さんは、J-ABSのエグゼクティブ・ドリームパートナーに就任。すでにリモートでアフリカ人に打撃指導したこともある。「いつかアフリカに行って野球教室をやりましょう」と言ってくれているという。

友成さんは野球競技の普及を最終目標としているわけではない。野球を通じて人材を育成し、アフリカ社会の発展に寄与したいと考えている。

「アフリカでは、野球をやるようになって学校の成績も上がったという子供が多いんです。ガーナでもタンザニアでもそうでした。子供たちの成長を願う気持ちは万国共通です」

日本、アフリカでの経験や知見をもとに、「ベースボーラーシップ教育55の柱」という教本を作成。「規律・尊重・正義」を軸にし、英語とフランス語にして指導者向けに配布し、セミナーを開催する活動を始めている。来年にはナイジェリアに「ベースボーラーシップスクール」も立ち上げ、選手とともに指導者の育成にも着手する。

「アフリカで野球が存在する国のうち12カ国で事業を行っていますが、並んで礼をすることから試合が始まります。押しつけたのではなく、日本ではこうですよ、アメリカはこうですよと言っています。ただ、日本はWBCで3回も優勝しているし、世界ランキングも1位、大谷翔平というスーパースターを生んでいる。さあ、どちらを選びますか? と問いかけます」

そして、甲子園大会の映像を見せる。開会式での入場行進、満員の球場で行われる決勝戦にアフリカの人々は例外なく驚嘆し、自分たちの国でもこういう大会を創りたいと言う。タンザニアでは14年2月に「第1回タンザニア甲子園大会」を開催。2回目を同年12月に開き、以後、毎年12月に行っている。22年の第10回大会には男子野球10校(南スーダン含む)、女子ソフトボール5校、計250人が参加しており、今年12月で14回目を数える。またケニアでは過去3度行われ、ガーナでも来月に3度目の「甲子園大会」を開催する予定だ。

近年のアフリカは経済成長率が高く、天然資源も豊富で若年人口も多い。縮みつつある日本にとって、アフリカの経済的ポテンシャルの高さは魅力だ。野球がアフリカの人材育成と発展に寄与し、野球を通じて日本とアフリカの距離がますます縮まっていくこと。それが友成さんの望みだ。

そのためにもナイジェリア代表チームを強くして、世界にインパクトを与えたい。

「アフリカの子供たちがナイジェリア代表チームに憧れるようにしたい。今回の監督就任は私の運命だと思う。今のアフリカの子供たちが大人になる15年後、松井さんや大谷選手のようなスーパースターが生まれているようにしたい」

決して夢物語ではない。そう思わせてくれる熱量が異色の野球人にはあった。【沢田啓太郎】(終わり)

◆友成晋也(ともなり・しんや)1964年7月16日生まれ、東京都出身。慶応から慶大に進み、硬式野球部に所属。内野手。リクルートコスモス(現コスモスイニシア)、JICAを経て、一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構代表理事。ガーナ、タンザニア代表監督、南スーダンで青少年野球団監督を歴任。アフリカ訪問国は駐在も含めて19カ国にのぼる。

◆28年ロス五輪野球 出場枠は6。開催国のアメリカ、今春WBC上位のベネズエラ、ドミニカ共和国はすでに出場権を獲得。残り3枠のうち2枠は、27年秋の「WBSCプレミア12」においてアジア最上位とヨーロッパまたはオセアニアの最上位チームに与えられる。最後の1枠は28年3月までに開催予定の最終予選で決まる。ナイジェリアは27年夏開催予定のアフリカ予選を勝ち上がり、最終予選での出場権獲得を目指している。

ガーナ代表選手たちとミーティングを行う友成晋也さん(提供:JーABS)
ガーナ代表選手たちとミーティングを行う友成晋也さん(提供:JーABS)