阪神対DeNA 2回裏阪神2死一塁、二塁、梅野の右翼への打球をソトが捕れず先制の2点適時三塁打となる(2019年4月9日撮影)
阪神対DeNA 2回裏阪神2死一塁、二塁、梅野の右翼への打球をソトが捕れず先制の2点適時三塁打となる(2019年4月9日撮影)

9日の阪神-DeNA戦は大いに盛り上がりました。左足薬指の骨折、さらには隠していた右手首の疲労骨折をおしてプレーを続ける正捕手・梅野隆太郎がサイクル安打を放つ活躍ぶり。一時は5点差をつけられていたゲームをひっくり返す逆転勝利でした。今季初の甲子園球場に虎党の歓声が響きました。

この試合、プロ野球界の“裏方”による隠れた好プレーがあったという話を書きたいと思います。

梅野の最初の打席は2回2死一、二塁でまわりました。その打球は右翼方向への飛球になります。これをDeNAの右翼手ソトがグラブを出しながら捕球できなかった。その間に走者は生還、梅野も一気に三塁へ到達しました。

これで乗ったのか梅野は4回に右前打、8回には1イニングで本塁打と二塁打をマーク。奇跡的ともいえるサイクル安打を達成したのです。ここでポイントになるのが2回の三塁打でした。

これは当初、「失策」と記録されていたのです。プロ野球の試合には公式記録員が帯同、常にデータをつけています。ちょっと複雑なプレーが出るとマイクで記者席に聞こえるようにアナウンスします。この場合も「エラー。ライト」といった感じで公式記録員の小熊陽介記録員が伝えたわけです。

ところが3回表終了時点。小熊記録員が「三塁打にします」と公式記録を訂正したのです。皆無ではないけれど、めずらしいと言えばめずらしいことです。試合中でしたが、5回裏終了でグラウンド整備で少し間が空くタイミングで少しだけ確認に行きました。そこでの説明はこういうものでした。

「グラブが届く範囲に見え、また当てて落としたようにも見えたので」。そんな理由で最初は失策を記録したといいます。しかし、きわどいプレーだったのは誰もが思うところ。そこで、あらためてビデオでリプレー検証したといいます。

公式記録員は常に2人体制なのでともに協議。その結果<1>グラブに当たっていない<2>スライスしていくような打球で落ちた…などと判断。三塁打に訂正したということでした。

その三塁打から梅野の大記録達成につながっていったのです。後日、小熊記録員にこんな話をしていました。

「まさか、あそこからサイクル安打を記録するとは思わなかったですね…」。率直な様子で驚いていました。

審判でも記録員でも間違いはあります。それを責めるよりも素早く気づき、対処する。それが重要だということでしょう。もし訂正されず、失策のままで梅野が同じような働きを見せることになっていれば…。「幻のサイクル安打」となって、いろいろな見方が飛び交っていたかもしれません。

そういう意味で公式記録員による「隠れた好プレー」だったと思っているのです。

阪神対DeNA 2回裏阪神2死一、二塁、梅野は右翼へ三塁打を放ち滑り込む(2019年4月9日撮影)
阪神対DeNA 2回裏阪神2死一、二塁、梅野は右翼へ三塁打を放ち滑り込む(2019年4月9日撮影)