今年初の対外試合だ。勝敗は関係ない。結果より中身。岡田はそこだけにこだわる。そういう意味では見どころ十分の内容だった。
何より若い選手の躍動感がよかった。1軍の当落線上にいる若手が、ハツラツとプレーし、ミスがあっても、すぐに取り返そうと懸命に動いていた。
板山、島田、原口…、彼らから必死さが伝わってきたし、代打で3ランを放った井上。「当てにいくようなバッティングはするな!」と諭されたばかりの若者は、初球を思い切り振り切った。これぞ集中力。大きな収穫となって返ってきた。
試合前、先発メンバーが発表され、それを聞き「なるほど」と感じた。近本、梅野、新外国人2選手は外れていた。ルーキーの森下も。ただ4番と5番は、構想通りに頭から名を連ねていた。大山と佐藤輝。この2人が今シーズンの打線の軸。これを決めている。だから外さなかった。岡田の考えはシンプルだった。
佐藤輝が躍動した。岡田も少しは胸をなでおろしたに違いない。反対に大山はヒットもホームランもなし。押し出しの四球で1打点はあったが、4打席で退いた。
4番が不発でも、チームは大量点の大勝。これがよかったし、岡田もうれしかったと思う。「4番の条件? みんなが納得する存在、そこに座り続けることができるバッター」と岡田は決めている。そして出した答えが「4番大山」。今後、よほどのことがない限り、4番は動かさない。こうと決めたら、それを貫く。岡田はそういう指揮官だ。
前回の監督時、チームには絶対の4番がいた。いや、2003年まで金本知憲は3番だったが、2004年から岡田は彼を4番に変えた。「全部、ホームランを狙え」とささやき、試合前に行う先発メンバー表には、4番金本から書き続けた。「そら楽よ。4番で悩むことはないし、迷いもない。ずっと試合に出るんやからな」。
あの時もそうだった。同年7月、甲子園での中日戦。岩瀬から死球を受けた。手を骨折。記録が途絶えるのか…。翌日、骨折が判明しているにもかかわらず、岡田はメンバー表に4番金本と記していた。
「どうする? とかはなし。出るんやろ、で話は終わり」。苦笑いしながら、金本は内輪の話を明かしていたけど、これも4番に対する信頼の証しだった。
金本と比較するのは酷だし、まだまだ次元が違う。しかし、岡田は決めたのだ。替えのきかない4番。もしこれが崩れるようなことがあれば、その時はチームが窮地に陥った時。必然、大山に重圧がかかる。
「でもな、4番はいつもいつも結果を出せるわけではない。そんな時、誰かがカバーするのよ。3番が、5番が結果を出して、4番を楽にさせる。これがクリーンアップ」。以前から岡田はこう口にしていた。2005年に置き換えれば、シーツや今岡が不振の時の金本を救った。もっとさかのぼれば1985年、掛布をバースと岡田がフォローして、強いクリーンアップを築いた。
先にも書いたが、この日、大山から快音は聞けなかった。しかしチームは打ちまくってのボロ勝ち。いきなり4番が打てなくても、勝つことができた。こういう中身が、岡田の手ごたえになる。
掛布も金本も「阪神の4番論」は共通していた。打線の責任を背負うポジションであり、打てば勝つ、打てなければ負ける。そこまで抱え込むのが4番。2人はそこで戦い続けた。
2023年シーズンは、大山が覚悟を持って挑む。だけど、この日のような試合展開なら4番だって、打てなくてもいい。みんなが助けてくれた。そう思うことと同時に、みんなが打てない時に、4番が打つ! 「みんながみんな、結果を出したら、逆に恐ろしくなるからな。悪くなる時も一気にみんなに訪れるんちゃうか…と心配する」。だから楽な時、4番は打たなくてもいい。4番が打たなくても勝った2023年のスタート。とてもいい感じである。【内匠宏幸】(敬称略)(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「岡田の野球よ」)




