球界全体が若返りに進んでいる。監督もそう。今オフ、巨人の監督だった原辰徳が退陣となった。ソフトバンクの藤本博史、楽天の石井一久もユニホームを脱いだ。
代わって監督に就任したのが巨人の阿部慎之助、ソフトバンクの小久保裕紀、楽天の今江敏晃。彼は40歳。監督の平均年齢がまた下がった。そんな中、たったひとりになった60代の監督、岡田彰布がチームを日本一に導いた。年齢にあらがうように、よみがえった勝負師監督。その手腕に対し、いまや絶賛の嵐がふいている。
長い評論家時代だった。いつまでたっても阪神カムバックの話はこない。常に監督候補であっても、話は立ち消え。万年候補のまま「岡田はもう終わり」「監督復帰はないやろな」とささやかれた。それがどうだ。そんなことを言っていた声は消え、「さすが岡田!」と見事な手のひら返し。マスコミの中にも、あれほど批判していたのに、賛辞を送り続ける逆転現象…。これに対して岡田に問うたことがある。
「そんなん、気にしてないわ。人それぞれやんか。阪神というチームに身を置いたら、それが当たり前やしな」。岡田は既に達観していた。「それより監督になった限りは、勝つためにどうするか。それしか考えてないから」と言い放っている。
長いシーズンをぶっちぎって優勝した。クライマックスシリーズでは「あれだけ差をつけて、それで負けたら、しゃれにならんから」と、プレッシャーがかかった。しかし広島に付け入る隙を与えず、連勝で勝ち抜け。楽しみにしていた日本シリーズの舞台を迎えた。
常に自信をみなぎらせる岡田だが、今回はいたって謙虚だった。オリックスの強さを認め、あくまで「挑戦者」の姿を崩さなかった。そんな中、岡田の野球全開のシーンが第7戦で見ることになる。
宮城を打ち崩し、中盤で6点のリード。セーフティーリードと思える状況で迎えた6回表だった。1死から木浪が相手エラーで出塁。ここで打席に坂本。さあ、どうする。岡田が送ったサインは「送りバント」だった。まずは6点差を7点差にする。この1点の重みを岡田は作戦によって、選手に伝えた。
6点の余裕がある。そのまま打たすこともあり、の展開で、次の1点をどれだけ確率高く奪えるか。「野球は1点の積み重ねよ。そらビッグイニングはあるけど、まずは1点をどう取りにいくか。だから考え方に緩みが出たらアカンのよ」。緩まない監督。それはおもしろくない野球と感じられるかもしれないが、岡田はあくまでクールに実行していく。
このケースは得点にならなかったが、それは無駄ではなかった。選手に「こうして点を取りにいくんや」と改めて認識させ、それがタイガースのスタイルであることをわからせた。「そうよな。選手が自分の役割を理解したのがもっとも成長したところやろな。9月の負けないでリーグ優勝したあたりから、どれだけ強いねん…とオレ自身が感じていたから」。
これから先、まだまだ伸びしろがある、と断言した。岡田はこの先、どれだけ監督を続けるか、それは本人次第となった。もうすぐ66歳になる球界最年長監督は、それほど長くは務めない…と非公式で明かしているが、チームは間違いなく「黄金期の入り口に入った」と認めた。今度こそ、常勝タイガース構築へ。岡田はまだまだかじを取る気でいる。【内匠宏幸】
(敬称略)




