ハワイから戻った監督、岡田彰布はトラ番の取材に、こう答えている。来年2月のオープン戦スタートでぶつかる巨人戦では、門別を投げさせない…と早々と明かした。

「そんなん、もったいないやろ」。門別といえば岡田の2024年の推し投手。高卒2年目の若手への期待のほどが先のコメントに表れていた。

もし門別が先発ローテーションに入ってくれば、村上、大竹、伊藤将、才木という若い先発陣が誕生。残る枠を青柳、西勇らで争うことになる。ということは、来シーズンも先発投手にドラフト1位はいないことになる。門別もドラフト2位。異色のローテーションが続くことになる。

改めてここ10年の阪神ドラフト1位を振り返ってみた。(年は入団年次)2013年=藤浪、14年=岩貞、15年=横山、16年=高山、17年=大山、18年=馬場、19年=近本、20年=西純、21年=佐藤輝、22年=森木、23年=森下。こういう流れできている。阪神はここ最近、野手の1位が多くあり、投手と野手の比率はほぼ同じ。そんな中、野手のドラフト1位は順調に育ち、いまでは森下-大山-佐藤輝のドラフト1位トリオでクリーンアップを形成するまでになった。

それに比べ、投手のドラフト1位の1軍定着はあまりに少ない。先発に限らず、セットアッパー、クローザーを含め、ドラフト1位でずっと1軍にいるのは岩貞だけ(加治屋はかつてソフトバンクの1位)。こういう形態は極めて珍しいといえる。

他の球団では先発スタッフの中に、ドラフト1位が最低でも1人か2人はいそうなもの。それが阪神にはいない。セットアップに目を移しても、岩貞、加治屋のみ。桐敷=3位、石井=8位、島本=育成2位、及川=3位の構成。そしてクローザーの岩崎=6位、湯浅=6位と下位指名入団が多数いる。

西純、森木のように将来性を買ってドラフト1位に指名したから、それらの投手はこれからの素材。とはいえ、投手ドラフト1位がここ最近、大成していないのも事実。要するに指名順位は関係なし。入団時に評価が低くても、立場は激変する…という見本が阪神に存在する。

強力投手陣こそがタイガースのストロングポイント。それを形成するのは、1位ではなくて、地道に力を蓄えてきた骨太の投手ばかり。それだけ逆境に強く、ひ弱さはない。これが阪神のいまの育成方針ともいえる。

ただ、やはりドラフト1位入団には華がある。近年では藤浪か。さすがドラフト1位とうならせる1年目からの投球だったし、甲子園を熱狂させたことは多くのファンの記憶にある。絶えて久しいドラフト1位投手の活躍…。それだけに今回の1位投手、下村には期待せずにはおれない。「安定感のある投手や」と岡田も高評価だったし、先発、中継ぎどちらかで1軍定着は十分ありうる。この下村に、先に書いた西純、森木。まさに「出でよ、ドラ1!」の2024年シーズン。これがうまくハマれば、骨太プラス若さの投手陣が誕生する。【内匠宏幸】(敬称略)