阪神の新監督、藤川球児が精力的に動き始めた。この原稿を書いている時間、藤川は宮崎にいる。2軍の関係者と会い、今後スタートする秋の練習、秋季キャンプの具体的な進め方についても言及している。
とにかく話し出したら止まらない。監督就任発表があった翌日。スポーツ新聞には「球児語録」があふれた。新聞の2面、3面をぶち抜いての語録展開。このような紙面を見るのは初めてかもしれない。
「勝ちにいきます。当然、勝ちにいきますから」。このフレーズが印象に残っている。ただし、そのための具体的な方策にまでは触れていなかった。まあ、それは今後、出していくのだろうが…。
前監督の岡田彰布は、この点に関しては明解だった。「1点を確実に取る野球。その1点はベンチで取らせる」。はっきりと宣言した。この2シーズン、ベンチ力で1点を取る方法で、野球ファンをうならせた。もちろん失敗はあったが、例えば23年の開幕戦。終盤にチャンスが生まれ、走者が二塁に進んだ時、2球目の前に「代打原口」を告げる勝負手を打った。そして原口はホームランを放っている。「あれか? ランナーが二塁に行けばと準備してたわ。別に普通の作戦やんか。違ったのはホームランを打ったことよ。タイムリー期待やったからな」。これもベンチ力でもぎ取った典型的な例である。
他にも1点の重みを考え、スクイズを敢行したり、送りバントの局面でバスターに切り替えたり。投手の継投にそれがあった。1点を守るための継投。23年の日本シリーズで、ピンチの場面で湯浅をマウンドに送った。まだ投げられないと思われていた湯浅を起用したことで甲子園は興奮の絶頂だった。たった1アウトを取るための驚くべき作戦。これらは岡田の持つ勝負勘であり、真骨頂というべきものだった。
そういった監督力が藤川にも問われる。先発、セットアッパー、クローザーのすべてを経験してきたから、投手の起用法には期待が持てる。ポイントは攻撃に関してとなる。藤川に1点をベンチで取りにいく采配力が備わっているのかどうか。投手出身監督につきまとう問題点。だからこそ、藤川の脇で攻撃の作戦を助言できるコーチが必要になる。
いわゆるヘッドコーチの存在なのだが、現状の報道ではヘッドコーチを置かず、それに準ずる立場のコーチをつけるとのこと。それがコーチの藤本、野村になるのでは…とされている。そのままコーチ陣が配置されるとなれば、攻撃のバリエーションがどうなるのか。藤川にとっては、神経質になる状況が横たわることになる。
先にも書いたが、岡田は1点を監督力で取らすと口にできるだけの裏付けがあった。それをいまから藤川に求めるのは酷かもしれないが、やはり経験豊富なヘッドコーチの必要性が出てくる。まだ正式な球児内閣の陣容は発表されていない。【内匠宏幸】(敬称略)(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「岡田の野球よ」)




