<イースタンリーグ:日本ハム3-2ロッテ>◇23日◇鎌ケ谷

ファームで先発転向を目指し実戦登板している日本ハムの大卒2年目・北山亘基投手(24=京産大)に注目した。チームとしては1軍の先発強化となるが、この試合では北山の能力開発への課題を分析する。

   ◇   ◇   ◇

5イニングを投げ、64球で2安打5奪三振2四球、1失点という内容だった。初回高部に先頭打者本塁打を許し、3回には連続四球という場面もあったが、5イニング全体を見た印象としては、先発としての適性はあると感じた。

球種が豊富で、この日のピッチングを見る限りはカウント球も決め球も複数あり安定していた。右打者、左打者によって、攻略するピッチングの基盤を持っているように感じる。

右バッターには、追い込んでからカーブ、スライダー、フォークを勝負球に、左バッターには、同様にチェンジアップとフォークでと、ベースになるピッチングができつつある。

そして、私がもっとも効果的だと感じたのは大きなカーブだった。このカーブを意図的にストライクゾーンに投げることができるため、大切な緩急がうまれる。この日のMAXは149キロ。今や球界には150キロ後半を連発するピッチャーがゴロゴロいる中、149キロは際立つ存在ではない。

それでも、ブレーキ鋭いカーブを操ることで、その対極にある真っすぐは、打者の体感速度が実際よりも速くなる。カーブとまっすぐ。緩急をつくる上では最強の組み合わせを、北山はものにしようとしている。カーブがあるから真っすぐは生きるし、カーブがあるからチェンジアップやフォークにより、さらにピッチングに幅が出る。

この試合で見た、カーブ、チェンジアップ、フォーク、スライダー、そして常時147~8キロの真っすぐがあれば、球種としては十分だ。これまで抑えだった時の北山は強いボールを投げようと意識するあまり力みが感じられた。

しかし、この試合での真っすぐにはそこまでの力みは見えず、それでいて147~8キロでしっかりストライクを奪っていた。力みが伝わらずにこのスピードは、先発としての可能性があると、感じさせてくれた。

言うことなし、と言って1軍昇格へ送り出してあげたいところだが、ここはきっちり課題も加筆しておく。

私が見ていたスタンドの位置からは、キャッチャーの構えがはっきり見えない時があった。そこで、断言できないところが、ファンの皆さんには申し訳ないが、右打者の内角に2球、効果的なボールを投げていた。1球は打って詰まった捕飛。もう1球は遊ゴロ併殺打になった。

ただし、全景から受けた印象からすると、どちらも逆球だった可能性があった。同じ右打者の内角球でも、逆球でたまたま厳しく内角を突いたボールと、意図的に狙った内角球では、意味合いはまるで違う。

私はことあるごとに捕手としての経験から、右投手は右打者の内角、左投手は左打者の内角を、難易度の高いボールであり、非常に重要だと解説してきた。

それは、厳しくいきすぎると死球になる恐れがあり、それだけピッチャーにはプレッシャーがかかる。最高レベルの精度が求められる。ゆえに、ここへの制球が身に付いているピッチャーは限られる。

逆に言えば、そこを克服して自分のものにしているピッチャーは、1軍で成績を残せると言い換えることができる。それだけ、大切な技術だ。そこを踏まえて指摘するなら、この日の北山の右打者への内角球は意図的なものか疑問符がつく。非常に気がかりだ。

1軍の重要局面で、右打者の内角を狙って突けるか。意地悪い言い方になるが、ファームでの偶然の内角球を、突き詰めて自分のものにしなかったがゆえに、勝負どころで「投げられるだろう」の曖昧さが致命傷になることだってある。私は、そこまでこだわりたいほど、大切なボールだと認識している。

前回は3イニングを投げ、この試合では5イニング、次回もある程度は投げるだろう。ここで結果を出せば、1軍の先発としてチャンスが巡ってくる。さらに結果を出せば、チームにとっても大きな戦力になる。

ここから先は1軍のチーム事情、成績も絡み、一足飛びに先発というチャンスが回ってくる可能性はある。その時、待ったなしの場面で、「投げられるだろう」の曖昧さで見切り発車することのないよう、チェックを怠らないでほしい。小さいことかもしれないが、それがマスクをかぶってきたものとして、後輩に伝えられるメッセージになる。

(日刊スポーツ評論家)