左手にテーピングを巻いて走塁練習を行う中京学院大中京・藤田(撮影・清水貴仁)
左手にテーピングを巻いて走塁練習を行う中京学院大中京・藤田(撮影・清水貴仁)

「バズーカーみたいだった」。大船渡(岩手)・佐々木朗希投手(3年)がたたき出した163キロ。国内高校生投手の最速球を受けた中京学院大中京・藤田健斗捕手(3年)はこう表現した。

テープを巻いた左手がその衝撃を物語る。奈良県内で7日まで行われたU18高校日本代表候補1次合宿。藤田は、2日目(6日)の紅白戦で佐々木とバッテリーを組んだ。歴史を塗り替えた1球は、横浜(神奈川)・内海貴斗内野手(3年)に投じた3球目だった。「衝撃がすごかった。こんなに受けて痛いと思ったのは初めて。人生で見た中で一番速かった」。おかげで藤田は左手人さし指の付け根を裂傷。「手が痛くて。テーピングしました」。一夜明け、異次元の剛速球を思い出して笑った。

宿舎でも、佐々木の話題で持ちきりだったという。打席に立った打者を中心に「あんな球みたことない」の大合唱。チームは「令和の怪物」にあっという間にくぎ付け。ただ、合宿で目にしたのは怪物のすごみだけではなかった。「優しい子でした。試合中にミスしても、声をかけてくれたり」と藤田。異次元の存在に見えた佐々木も同じ17歳の高校生で、1人の野球人だとも知った。

全国的な知名度はまだ低い藤田だが、二塁送球タイムは最速1・81を誇る強肩捕手。高い打撃センスも秘め、合宿最終日の実戦形式の練習では「高校投手四天王」の一角、横浜(神奈川)・及川雅貴投手(3年)から安打も放った。「打撃、守備、走塁、全ての面でトップの人とやって、歯が立たないなと。また招集されたら対等になれているように」。トップレベルの実力を目に焼き付け、夏へのレベルアップにつなげる。【望月千草】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

シート打撃の守備で本塁を守る中京学院大中京・藤田健斗捕手(撮影・清水貴仁)
シート打撃の守備で本塁を守る中京学院大中京・藤田健斗捕手(撮影・清水貴仁)