関西6大学野球の大経大が野球部の推薦枠を使って学生コーチを補強した。堤尚虎(たかとら)学生コーチ(1年=おかやま山陽)は、17年夏、18年春とおかやま山陽を甲子園へ導いた堤尚彦監督(49)の長男。3年夏もベンチ外だったが、大経大に進み、父譲りの野球頭脳で07年秋以来のリーグ制覇へ知恵袋となろうと奮闘している。

オリックス、巨人などで活躍し引退翌年の16年から指揮を執る山本和作(かずなお)監督(34)は「枠を学生コーチに使うのは初めての試み。スタッフが少ないこともあったが、堤監督の細かい野球を見てみたいというのもありました」と説明する。大学のコーチが岡山まで練習を視察。チームを引っ張る姿などを確認する力の入れようだった。

堤は「ありがたい話。感謝しかないです」と恐縮する。親子鷹だった高校時代、堤は捕手でBチームの主将を任されたが、ベンチ入りは3年春に1度だけ。「公式戦も1回くらいしか出ていない。下手ですから。覚えていない」と話すが、相手のクセを見抜く技術などでチームを支えてきた。「クセが出やすそうなところを集中的に見ていけば、投手のクセは出てくる」。今後はリーグ戦の対戦相手の研究も重ねていく。

新型コロナウイルスのため全体練習は8月から。活動休止中は岡山に戻り、父の指導でノックの腕を磨いた。「ノックが下手な指導者に教えられても…というのを自分自身が思っていた。なめられないように」。ノックバット3本のうちすでに2本を折った。毎日ノックを打ち続け、少しずつ思うような打球を打てるようになってきている。

紅白戦では監督として采配する。「一番それが楽しい。試合を動かすのが好き」とサインを出す。山本監督からの評価は「深く考えすぎてドツボにはまる」と辛口で、堤は監督としてもまだまだ修業中だ。将来の目標は体育の教師となって岡山に戻り、高校野球の指導者として父と対決して勝つこと。「父と真反対なチームか父と同じ細かい野球で勝つか悩んでいます」と笑う。まずは守り重視、投手力充実の大経大で、名参謀に成長しその作戦、頭脳でリーグ優勝、全国制覇を狙う。【石橋隆雄】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)

◆堤尚虎(つつみ・たかとら)2001年(平13)11月8日生まれ、岡山県浅口市出身。鴨方西小4年から鴨方スポーツ少年団でソフトボールを始める。ポジションは捕手。鴨方中では硬式の金光ボーイズでプレー。捕手と外野手。176センチ、70キロ。右投げ左打ち。

大経大・堤尚虎学生コーチは、父・おかやま山陽堤監督のように、将来は高校野球の指導者を目指す
大経大・堤尚虎学生コーチは、父・おかやま山陽堤監督のように、将来は高校野球の指導者を目指す