平成国際大女子硬式野球部では、打撃練習用の一部ボールにひらがなや数字、アルファベットを書いている(撮影・沢田啓太郎)
平成国際大女子硬式野球部では、打撃練習用の一部ボールにひらがなや数字、アルファベットを書いている(撮影・沢田啓太郎)

3月下旬、埼玉県加須市で行われていた全国高校女子硬式野球選抜大会の準々決勝を見に行った。驚いた。想像以上にレベルが高い。投手の球速は110キロ台が多く、120キロ超を投げるサウスポーもいた。内野の規格は男子と同じで、そこでいとも簡単に併殺プレーを完成させる。私はいつの間にか、ゲームに入り込んでいた。

第3試合で福岡の折尾愛真が延長サヨナラ負け。先発し最後まで投げていたポニーテールのピッチャーはマウンドに崩れ落ちた。試合後のあいさつを終え、クールダウンのキャッチボール中も涙は止まらない。キャッチャーに体を抱きかかえられながらベンチ裏に下がっても、まだ泣いていた。そこまで野球に入り込み、感情をさらけ出した女子球児の姿に心を揺さぶられた。女子の硬式野球を追いかけてみようと思った。

全くの手探りだったので、社内のツテをつたって平成国際大女子硬式野球部の濱本光治監督(67)にまず会うことにした。濱本監督は2006年に花咲徳栄高校女子硬式野球部を日本一に導き、2007年に就任した大学では、大学選手権の優勝を毎年のように争う強豪チームに仕立て上げている。

平成国際大女子硬式野球部の濱本光治監督(提供:平成国際大女子野球部)
平成国際大女子硬式野球部の濱本光治監督(提供:平成国際大女子野球部)

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普段の練習でもいたるところに工夫を施している。ボールにひらがなや数字、アルファベットを書き込み、フリー打撃の際に何が書かれているか言わせながらスイングさせる。動体視力を鍛えるのが目的の1つではあるが、ゲーム感覚を持たせ、練習に飽きさせないためでもある。

部員たちが2・5キロの鉄の棒でティー打撃をするところも見た。普段使っているバットの重さが830グラム前後というから、およそ3倍。腕の力だけではまともに振ることができない。「重力を利用して、グリップからストンと下ろしていかないと振れない。腕力で振るのではなく、体のしなやかさや使い方でしっかりスイングするための練習です」と濱本監督。練習に飽きさせない工夫も含め、女子にあった練習方法を考え続けている。

重さ2・5キロの鉄の棒でティ打撃を行う平成国際大女子硬式野球部の選手(撮影・沢田啓太郎)
重さ2・5キロの鉄の棒でティ打撃を行う平成国際大女子硬式野球部の選手(撮影・沢田啓太郎)

「当たり前ですが、男子と女子では筋力も骨格も違う。男子と同じやり方ではケガにつながる恐れもある。いまトレーナーの方たちや整体師の方たちと一緒に、女子硬式野球ならでは体作りやトレーニングメニューを考案中です」

海にいるクラゲの動きがヒント、と教えてくれた。いずれ詳しく、聞かせていただきたいと思っている。【沢田啓太郎】

平成国際大女子硬式野球部

◆創部 2007年4月

◆現在の部員数

24人=4年(5人)3年(3人)2年(5人)1年(11人)

◆おもな練習場所

平成国際大学野球スタジアム(室内あり)埼玉県加須市大利根野球場

◆1週間の練習スケジュール

(月)午前中練習(火)午後4時30分から練習(水)午後2時から練習(木)オフ(金)午後2時から練習(土、日)ゲーム

◆指導陣の体制

(監督)濱本光治(ヘッドコーチ)平賀精二(外部コーチ)津田啓史、齋藤宗隆、吉澤雅之、高畑好秀

◆寮の有無 なし

◆おもな実績

全日本大学選手権高知大会(優勝2回、準優勝1回)全日本大学選手権(優勝3回、準優勝5回)全日本女子選手権(優勝1回、準優勝1回、3位1回、8強6回)

◆スローガンなど

部訓「すべてに感謝」

スローガン「人は誰でも努力と勉強次第でその道の第一人者になれる」

目標「名実ともに日本一・世界一」

◆そのほかアピールポイント

選手が「故障しない」「疲れない」「うまくなる」「チームワークが良くなる」ための追求に特化しています(濱本監督)

◆現役生からのメッセージ

井上愛海(まなみ)さん(4年) 「自分たちで考える野球ができます。いま何が足りないか自分たちで考え、その日の練習メニューを決めています」

藤原春香さん(4年) 「タテジマのユニホームは女子では珍しく、人気があります。また、外部コーチが多く、いろんな知識を吸収することができます」