野球女子大生が日本酒づくり? 平成国際大から生まれた純米大吟醸「明軽」/前編

大学女子硬式野球部の選手たちが、日本酒をつくっているのはご存じだろうか。埼玉県加須市にある平成国際大の同部では、2021年から地元の関係者と一緒に酒づくりに取り組んでいる。酒米の田植え、稲刈りから、仕込み、醸造にもかかわり、ラベルのデザインも担当。「明軽(めいけい)」と名付けられた純米大吟醸はこのほど、2年目の新作が出来上がった。彼女たちはなぜ、日本酒をつくっているのだろうか?

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ユニホーム姿で「完醸祭」

いまどき、女子大生がお酒をつくること自体は珍しくはないだろう。でも、硬式野球部員が日本酒をつくっていると聞くと、なぜ? と思う。

その日はあいにくの雨だった。4月26日、午後4時過ぎ。キャプテンの井上愛海(まなみ)さん(4年)ら代表者5人は、車に分乗して、広々した田園のなかにぽつんと立つ、小さな社(やしろ)に到着した。加須市北部にある「八坂神社」。全員、試合用のユニホームに着替えている。

社の脇にある家屋では、地元の農家や酒蔵の人たちがお菓子と缶コーヒーを準備して、彼女たちを待っていた。本来ならば外の境内で執り行うが、雨だから仕方がない。

「それでは始めましょう」

平成国際大女子硬式野球部の濱本光治監督(67)のひと言で「完醸祭」が始まった。

醸造を無事終えたことを神様に報告、感謝する儀式だ。濱本監督が祝詞を読み上げ、大麻(おおぬさ)を振る。部員たちも神妙に見守っているのだが、どこかほんわかとした空気が流れる。なぜだろう。

神棚に醸造終了を報告する平成国際大の濱本監督(撮影・沢田啓太郎)

神棚に醸造終了を報告する平成国際大の濱本監督(撮影・沢田啓太郎)

儀式が終わると、井上さんらは地元の人たちひとりひとりに感謝の言葉を述べ、2年目の「明軽」を手渡した。

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1988年入社。プロ野球を中心に取材し、東京時代の日本ハム、最後の横浜大洋(現DeNA)、長嶋巨人を担当。今年4月、20年ぶりに現場記者に戻り、野球に限らず幅広く取材中。