今年も高校野球の季節が訪れた。普段はソフトバンク担当としてプロ野球取材をさせてもらっているが、7月になると高校野球の取材現場に行くことが多い。今夏で各地の九州地区予選を取材するのは3年連続となった。
高校野球では、プロ野球ではめったに起こらないであろうことが毎年のように起こる。
7月16日だ。夏の佐賀大会準々決勝を取材した。鳥栖工対鳥栖の一戦。9回を終え、2-2と決着はつかず。無死一、二塁でスタートする延長10回タイブレークに突入。先攻鳥栖は1死二、三塁とチャンスを拡大させた。
一打で勝ち越しの場面だったが、6番打者は空振り三振。すると、三塁走者の呉昇勲(オ・スンフン)外野手(3年)が奇策に出る。振り逃げで相手捕手が一塁へ送球したと同時に「狙っていた」と勢いよくスタートを切った。ホームへ頭から突っ込み、本塁クロスプレーの判定はセーフ。間一髪で決勝点をもぎ取った。
息詰まる延長戦で見せた好走塁。勝算はあったのか-。試合後、勝利の立役者となった呉は「イチかバチか、でした。これでアウトなら仕方ないと思って」と言った。さらに「練習ではやっていないです。とっさにです。あのケースは本当に初めて」。チームメートもびっくりの神走塁だった。
奇策に出る価値はあった。相手先発は最速147キロを誇る、プロ注目エースの松延響投手(3年)。実際に7回までで残塁は「7」を数えた。得点圏に走者を進めるも、勝負どころで1本が出ない。要所でギアを上げる右腕を前に、決定打を欠いていた。「松延投手もいいピッチャー。これでしか点は取れないと思ったので。腹をくくって、いきました」とギャンブル走塁の真意を明かした。
振り逃げ間に、三塁走者のホーム生還をこれまでに見たことがなかった。相当な覚悟、度胸のいるプレーに個人的には見えた。一連の事象をデスク(上司)と呼ばれる方に報告するも、素っ気ない反応。「自分の報告の仕方が良くなかった」と肩を落とし、球場を後にした。
プレーはすごくても、記者の報告が拙いと紙面上は大きく扱ってもらえないことがほとんど。記者自身は反省を繰り返す真夏となっている…。【ソフトバンク担当=佐藤究】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)




