「サードで4番は死守してくれ、ということは言いましたけどね」。大山悠輔が今季の契約更改を行った昨年12月5日。球団副社長・谷本修は虎番記者たちに囲まれる中で、大山に対して、そういう指示を出したと明かした。

「4番三塁」。ミスタープロ野球・長嶋茂雄の名前を出すまでもなく、昭和の野球少年ならあこがれのポジションだ。最近では各チームの主砲は外野手が多くなっているが、なんと言っても4番三塁なのだ。

阪神にも掛布雅之というレジェンドがいる。谷本も昔の野球少年だ。その意味を十分、知っている。だからこそ、その座が狙える存在である大山に対し、交渉の席ではめずらしいとも思えるフロントからの「死守指令」となった。

あれから半年が過ぎた。この日、行われたオリックスとの練習試合。大山は「5番左翼」でスタメン出場した。打順も守備位置も違う。コロナ禍で異例の状況とはいえ、期待をかけていた谷本の「死守指令」はシーズンが始まる前から守れていない。

「ボーアが4番ちゃうんやったら大山にしたらええのに」。谷本がどう感じたかは分からないが、この日のスタメンを知り、そう思った虎党もいたのではないか。助っ人軍団がそろって休んだ7日ソフトバンク戦、大山は4番だった。だが、この日は大山との三塁手争いに現時点で勝っているマルテが4番だった。

指揮官・矢野燿大がそうしなかったのは言うまでもなく状態がよくないからだ。その7日は4打数で2三振、無安打。ファームではそこそこ打つが1軍での試合では思うような結果が出ていない。勝利を目指す立場では当然だ。

だからこそ「この日だ」と思っていた。調子をガクッと落としているボーアが4番から外れた。さらに自分が座っているはずの「4番三塁」にはこれも助っ人がいるではないか。

なにくそ。プロなら、そう感じるのが当たり前だ。もちろん心の中ではそう思っているに違いない。練習試合ということを考えても悔しいだろう。昨季、108試合で4番を張ったプライドもあるはず。

ここで暴れろ。そう思ったが結果は出なかった。2回に放った右翼への当たりは悪くなかったが中途半端な空振り三振もあった。素人目に見ても思い切りがほしい。「死守指令」は生きているはず。奮起せよ。(敬称略)