24日は今年、野球殿堂入りした田淵幸一の誕生日である。74歳だ。言うまでもなく阪神のレジェンド。同学年の親友・星野仙一は先に逝ってしまったが、まだまだ元気でいて、若虎たちを見守ってほしいと思う。

田淵は75年に本塁打王を獲得している。前年74年まで実に13年間も連続本塁打王を続けていた王貞治をしりぞけてのタイトルだったので値打ちがある。しかし阪神にとって生え抜きというまでもなく右打者として本塁打王を獲得したのは田淵が最後だ。

今季、それ以来の右打者としての本塁打王が期待されているのが大山悠輔である。ここまで21本塁打を放ち、ライバルの多い中、十分、可能性を感じさせる。しかし当然だが、大山は浮かれていない。

「本数ばかり言われますが試合になったら、どの場面で打ったか、だと思います。チームの流れが悪いときに長打というのは流れを持ってこられる1つの手段でもあるので」

これは18日中日戦で逆転満塁弾を含む20、21号を連発したときの大山の談話だ。しっかりとちゃんと分かっているではないか、とうなずいたものだ。

そこで言わせてほしいのだが、この日の打撃内容についてだ。3安打猛打賞。9回に四球も選び、4打席とも出塁した。ほとんど盛り上がりもなく、DeNA上茶谷大河に6本の単打だけで完封勝ちを許してしまった敗戦にあっては評価できる内容だろう。

しかし思うのはその打撃内容だ。2、5回は右前打。結果的にかもしれないが右打ちだった。7回にようやく上茶谷得意のカットボールをとらえ、左前に引っ張った。こういう打撃を早い段階から見せてほしいと思ってしまった。

上茶谷は好投手だし、思うようには打てないのは当たり前だ。それでも「長いのをいったろか」という気配というか、厚かましさのようなものが伝わってこないのである。

現状、大山は5番打者だ。出塁しても次は好不調の波が大きいボーア。下位にはそれほど打撃を期待できる打者は、現状、見受けられない。だから大山にはズバリ走者がいない場合はすべて本塁打を狙うつもりでいってほしい。

大山が言うようにそれでこそ流れも来るし、チームに勢いもつく。言うのは簡単、実行は至難の業だが何とかそれをやり遂げて、4番打者にも復帰してほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対DeNA 2回裏阪神1死、右前安打を放つ大山(撮影・上田博志)
阪神対DeNA 2回裏阪神1死、右前安打を放つ大山(撮影・上田博志)