DeNA対阪神　7回裏の登板を終えナインとタッチする藤浪（撮影・加藤哉）

大物新人・佐藤輝明が豪快な場外弾を放ち、開幕投手・藤浪晋太郎に今季初白星がついた。

虎党にとってはこれ以上ないゲームだろう。打線もつながって派手な勝利だったが、その影で渋く光ったのは犠打を決め続けた藤浪の姿だった。

DeNA対阪神　6回表阪神1死一塁、藤浪は一塁線へバント成功（撮影・加藤哉）

9－2。終わってみれば楽勝だけれど途中まではそうではなかったと思う。DeNA先発・浜口遥大の乱調に乗じて1回に3点を先制。しかしそこからがつながらない。好調とは言えない藤浪が粘りながら投げている5回まで追加点がなかった。過去のケースを考えてもイヤな展開だ。

そのムードを破ったのが6回に出た佐藤輝の一発。さらにその後の攻撃が効いた。梅野隆太郎が四球。1死から打順は藤浪に回った。藤浪はきっちりバントを一塁前に転がし、走者を進めた。そして近本光司が適時二塁打。これで流れをつかみ、この回、一挙6得点で試合を決めたのだ。

藤浪は4回にも犠打を決めていた。さらに7回にも。プロ9年目の藤浪にとって1試合3犠打は初めてだ。同年齢のエンゼルス大谷翔平と同じく、打撃センスがいい藤浪。横浜スタジアムでは3年前に満塁弾も放っているほどだ。それでもこの日はつなぎ役に徹した結果、自身に今季初白星をもたらした。

今季は阪神投手陣のバントミスが目立っていた。3日中日戦は勝ったものの先発・青柳晃洋に白星はつかなかった。青柳自身のバントミスも影響していた。指揮官・矢野燿大は「練習もやってるし、攻撃にも投球にも影響する部分なんでチームとして大事にしてきてる。そこは課題として残っている」と反省していた。

そんなチームの課題を藤浪が1試合とはいえ、克服したことには意味があると思う。昨季1勝の藤浪が開幕投手に選ばれたのは、チームを背負っていってほしいという願いを込めてのこと。そんな男が投手陣が苦しんでいるバントをしっかりやったのは矢野もうれしいと思う。

もっと言えば藤浪が犠打を決める機会が多かったのは梅野、山本泰寛の下位打線が四球などで粘って出塁したからだ。下位でチャンスをつくって上位で決める。そしてクリーンアップにつなげていくというのは攻撃の理想だろう。この日の阪神はそれができた。これを続けていけるかどうか。佐藤輝の超人的なパワー同様に重要な注目点だと思っている。（敬称略）【高原寿夫】（ニッカンスポーツ・コム／野球コラム「虎だ虎だ虎になれ！」）

DeNA対阪神　7回表阪神1死一塁、藤浪この試合3度目のバントを成功させる（撮影・加藤哉）