ある種「昭和マインド」の持ち主と自覚しているので書く。指揮官・矢野燿大よ。そのぐらいでいいのだ。5回、阪神の攻撃で二塁走者・近本光司の動きを巡って両軍ベンチがヒートアップした。虎番記者の記事にある通りだ。

今回のヤクルト戦はいわゆる“いってこい”だ。先週火曜6月29日からの3連戦も甲子園で同カード。1週間後に球場を変え、同じ対戦だ。そして同日は知将・野村克也の追悼試合。ともに教え子である矢野、ヤクルトの指揮官・高津臣吾の対決でもあった。

それから1週間後の“公開口論”だ。野村の教え子という他にも2人には68年生まれの同学年、このオフ、53歳になる共通項がある。厳しい世界にあって一線でやってきたという自負も意識もあるだろう。だから余計だろうか。「そんなことやってるか!」「動いとるやないか!」。ほとんど「アホ・ボケ」レベルの言い合いになっていた。

冷静に見れば疑いをかけられたのなら「そんな行為はしてません」と審判に言えばいいだけのこと。何を熱くなっている、子どもも見てるんだぞ…などという意見もあるだろう。それは正しい。矢野も反省の様子を見せていたようだ。だが同時にプロの戦いにはムキ出しの闘志も重要なのだ。

首位陥落の危機が続く日々。ここまで首位を走って落ちていくのがどれほどこわいことか。口に出さなくても必死なのだ。それを思えば、自軍の選手をかばって思わず激高しても何もおかしくない。

特別な世界でもある。結果が出れば年収が一気に2、3倍アップ、一般人が生涯かけても稼げない金額を1年でかせぐ選手もいる。逆にダメなら若くても解雇。保障などほとんどない。それがプロだ。

「侍ジャパン」はいいが五輪期間中の話だけにしてほしい。ペナントレース中はライバル、敵だ。なれ合い的な様子は見たくない。監督となればなおさら。闘志むき出しになって、何もおかしくはないのだ。

「星野さんはあこがれ。星野さんにはなれないし、あんな風にはできないけれど…」。理想の監督像として闘将・星野仙一をあげ、そう話したこともある矢野。今は時代も違うし、何より本人自身、ソフトムードだ。だけど行くときは行く。やるときはやる。血眼で戦いに臨んでいかなければ優勝など絶対に手中にできない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)