「みっともない」。闘将・星野仙一ならこの試合を見て、そう言ったかもしれない。もちろん、これは空想の話だけど、このセリフはちょうど18年前の試合後、実際に出たものだ。

優勝を果たした03年の9月9日、相手も同じヤクルトだった。球場は神宮だったがスコアは「3-10」と似たような大敗。2点リードの5回裏、先発・伊良部秀輝が死球に四球と突如制球を乱し、逆転を許してしまう。試合後に我々、虎番キャップたちに囲まれた闘将は伊良部に対し「みっともない」と言った。

阪神対ヤクルト 1回表ヤクルト無死一、二塁、大山は山田の三塁への打球を一塁に悪送球する(撮影・宮崎幸一)
阪神対ヤクルト 1回表ヤクルト無死一、二塁、大山は山田の三塁への打球を一塁に悪送球する(撮影・宮崎幸一)

伊良部ほどの投手が勝手に乱れて自滅するとは。みっともない。そういうことだ。その流れでいくと、この日の阪神である。ライバル巨人を地元でたたき、首位を奪回したばかりのチームがこの試合とは。負けるのは仕方がないけれど、その内容だ。

今季初登板の高橋遥人をバックアップするどころか1回から足を引っ張った。大山悠輔、サンズが失策。1死一、二塁からサンタナの中前への当たりをそらした近本光司も拙いプレーに見えた。

阪神対ヤクルト 1回表ヤクルト1死一、二塁、左翼手サンズは中村の左前打をはじき、二走の生還を許す(撮影・清水貴仁)
阪神対ヤクルト 1回表ヤクルト1死一、二塁、左翼手サンズは中村の左前打をはじき、二走の生還を許す(撮影・清水貴仁)
阪神対ヤクルト 1回表ヤクルト1死一、二塁、サンタナの打球に中堅手近本が前に出るもおよばず2点適時二塁打となる(撮影・清水貴仁)
阪神対ヤクルト 1回表ヤクルト1死一、二塁、サンタナの打球に中堅手近本が前に出るもおよばず2点適時二塁打となる(撮影・清水貴仁)

ビハインド展開で出たブルペン陣も厳しい。5回に登板した2番手の藤浪晋太郎。目を見張る投球で3者凡退に切ったが6回に急変してしまう。3四球を出して降板。3番手・岩貞祐太も耐えられず走者をかえしてしまうと2イニング目の7回には炎上した。4四死球を出すなど乱れて5失点。安打は仕方がないけれど四球、死球の連発ではやっぱり話にならない。

失策に四球、死球。その結果が打者一巡攻撃を1試合に2度までも許しての大敗である。ひと言で表現して「みっともない」と言うしかない。この日の先発・高橋は気の毒だったと言えなくもないが9試合連続で先制されているのも首位チームとしてはどうなのか。

いつも勝てないのはペナントレースでは当たり前のことだし、いい試合、感動できる試合を常にできるわけではない。それでも負けるにしても内容があるだろう…と悲しくなる。

「もうちょっとやったな」「あそこはよかったな」。負け試合でも、そういう後味の残る戦いをしてほしい。その積み重ねが結果、優勝につながるのではないか。相手どうこうではない。闘将のように鋭い言葉は発しない指揮官・矢野燿大は守乱について「締まらんね」と言うにとどまったけれど「みっともない試合」はこれを最後にしてほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)