バンテリンドーム今季初勝利を受け、感じるのは「しばらくはこれでいいのでは」ということだ。打順である。この日、貴重な5号同点2ランを放った大山悠輔は「7番一塁」でスタメン出場。大山の7番は開幕から4戦続いた3月29日広島戦以来のことだった。

阪神のオーダーはこの日まで37試合で実に33通り。落ち着かないなと嘆くのは簡単だが、指揮官・矢野燿大、ヘッドコーチの井上一樹らが必死で頭を絞り、考えているのは間違いない。

その開幕4戦目、4番打者は佐藤輝明だった。つまり「4番佐藤輝、7番大山」も同広島戦以来になる。キャンプ、オープン戦の競争を通じ、勝負の4年目を前に矢野の出した答えはこれのはずだった。

そんな流れが大きく変わったのが前回のバンテリンドームだ。4月12、13日に連敗し、開幕から6カード連続で勝ち越せず、これは「2リーグ分立後最長」という不名誉な記録になっている。それを受け、14日の中日戦で首脳陣が取った策は予想外なものだった。

「2番佐藤輝 4番大山」。この日と同じ好投手・柳裕也との対戦を前にこの並びで挑んだのである。「現状、打線が機能していないんで何かキッカケがほしいと打撃コーチやみんなで相談しながらやったけど」-。当時、矢野はそう話したが結果は出ず、柳に完投負けを喫している。

この種の矢野の談話はその後もよく出てくるし、つまり、打線が相変わらず苦しいという状況を示している。それでも1周か何周か回って、試行錯誤を重ねた結果、大物打ち打者2人の並びがくしくも同じ名古屋で開幕時に戻ったということかもしれない。

それを「原点」と言っていいのかどうかは分からないが2人に結果も出たし、しばらくはこれで戦えばいいのではないか。勝手な見方だが豪快な佐藤輝、繊細な大山という個性に合った打順のような気もする。

別の意味でもこの試合は矢野野球の「原点」を感じさせた。8回に勝ち越せたのは中野拓夢の盗塁があったからで、足を絡める作戦はもっとも力点を置いていたところだろう。現状、これ抜きで攻撃力がアップすることは考えられない。

10日からは5敗1分けと今季まだ未勝利の広島との対戦だ。チーム盗塁数「7」とリーグ最少の広島に対し、最多「24」の阪神はそこで勝負を仕掛けていくことが勝利への道だと思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

中日対阪神 8回表阪神1死二塁、中前打を放つ佐藤輝(撮影・前田充)
中日対阪神 8回表阪神1死二塁、中前打を放つ佐藤輝(撮影・前田充)