世の中は「諸行無常」だ。上昇気配の阪神だったが連勝はいつかは止まるし、この日に限れば湯浅京己が誤算だったということだろう。「打たれない投手、負けない投手はいないんでね。悔しさをバネにしていけばいい」。指揮官・矢野燿大もそう言った。

これは正論である。どんな投手でも毎回、必ず抑えられるはずはないし、それは仕方がない。DeNAは今季、日曜日に勝っていなかったようだがついに勝った。いいことも悪いこともずっとは続かない。「諸行無常」は真理だ。

他にも敗因はあるだろうが、やはり6月に入ってムードを変えてきた島田海吏から中野拓夢、近本光司の「俊足トリオ」が中盤まで音無しだったのが響いた。ここが出なければ足を使えないし、それで相手バッテリーにダメージを与え、主軸の佐藤輝明、大山悠輔につなげるという形にならない。いつも、うまくいくはずもないが、そんな基本線を地道に続ける延長線上にしか勝利はないとあらためて思う試合だった。

あえて言えば少し気になったのは西純矢だ。2回に先制の2点適時打二塁打を放ち、二塁ベース上で両手を掲げ、大きなガッツポーズをしていた。感情を出すのはいいが、本来の仕事は相手打線を抑えること。後付けでなく「興奮しすぎでは…」と心配したら、直後に乱れてしまった。

もちろん感情を出すことで乗っていける面もあるし、なによりベンチも打撃に期待して8番に入れているのだから打って喜ぶのはいい。プロだし、そういうのも魅力の1つだ。それでも投手は繊細だと昔から聞くし、その辺りのバランスは若い西純にとってもこれからの勉強だと思う。

それにしても、だ。「諸行無常」と言ったけれどヤクルトは強くなる一方だ。虎党は広島が負けたことを喜んでいるかもしれないが、セ・リーグを面白くするためには下位球団がヤクルトをたたいていくことが絶対に必要だ。ヤクルトからすれば下の方でチョコチョコ順位が入れ替わっていても、何の影響もない。

重要なのは次カードの広島戦だ。今季ここまで7敗1分けと未勝利。それも「諸行無常」のはず。そろそろ勝てるはずだし、また勝たなければならない。独断を許してもらえれば、優勝どうこう以前にセ・リーグを面白くする責務は阪神にあると思う。マツダスタジアムから再発進したい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対DeNA 8回表DeNA1死三塁、湯浅(左から3人目)は嶺井の遊野選で追加点を許し降板となる(撮影・上山淳一)
阪神対DeNA 8回表DeNA1死三塁、湯浅(左から3人目)は嶺井の遊野選で追加点を許し降板となる(撮影・上山淳一)