これは苦しい。ショックの残る敗戦だ。クローザー岩崎優が打たれての苦杯。だが、これも勝負だ。抑えることもあれば打たれることもあるのだ。「(岩崎は)それは仕方がない。クローザーとして出しているんだから-」。指揮官・矢野燿大の言った言葉は、やや言葉足らずだけど、そういう意味だろう。

もちろんクローザーだけの責任ではない。先発ウィルカーソンが1回にいきなり4失点では流れはつくるのは困難だ。それでも2番手ケラー以降のブルペン陣が踏ん張った。これは逆転への“絶対条件”。出る投手、出る投手が打たれれば話にならないが、そこを踏みとどまった。

1番・中野拓夢、8番・山本泰寛は猛打賞をマークしたし、相手のミスにも助けられ、7回には待ちかねた主砲・佐藤輝明の同点弾が出た。8回には梅野隆太郎の“適時二ゴロ”という渋い形で勝ち越し、ようやく勝てるかと思った。

しかし甘くない。振り返ればそこまでにスキはあったと思う。1回、いきなり連打で無死一、二塁。クリーンアップに回るとはいえ、最近の流れを考えればここは「超積極的野球」で足を絡め、攻め立てる場面も見たかった。特に大山悠輔の調子が下降気味なので、そこに動きを持たせてもよかった気はする。

「いい試合はできていると思う。もちろん勝たないかんし、勝ち切られへんかったというのは課題ではあるけど」。矢野はそうも振り返った。その言葉は大量失点から一時は逆転する状況にまで持っていったことに対する手応えだろうが、やはり、勝てなくてはむなしく響く。

それでもと思う。最後は苦しい形で終わったが6月の阪神はまずまず踏ん張った。14勝8敗1分けで6つの貯金をつくることに成功。交流戦で少しだけ流れを変えたかもしれない。最後に逆転勝利し、再び勢いを出せればよかったが、相手のある勝負事、勝敗は「時の運」だし、こればかりはなんとも仕方がない。

結果以前に下位に沈む阪神に重要なのは、やはりドンドン挑戦していくことだろう。早い回から足を絡め、仕掛けていく。そうやって試合を動かしていくことが勝利への道と信じている。広島に2敗1分け、中日に3連勝。そしてDeNAに3連敗と浮き沈みの激しい状況で次はどうなるか。敵地・中日戦から始まる7月の戦いに注目したい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

DeNA対阪神 9回裏DeNA2死一、二塁、DeNAにサヨナラ負けし肩を落としてベンチに引き揚げる左から岩崎、佐藤輝、山本(撮影・上田博志)
DeNA対阪神 9回裏DeNA2死一、二塁、DeNAにサヨナラ負けし肩を落としてベンチに引き揚げる左から岩崎、佐藤輝、山本(撮影・上田博志)