情けない。4年連続勝ち越しを決めた本拠・甲子園で。2年連続勝ち越しの巨人戦で。今季24度目の零封負けを喫してしまった。1963年(昭38)の球団ワースト記録に並ぶ数字。指揮官・矢野燿大にとって今季、いや監督ラストとなる巨人3連戦は2敗1分け、未勝利で終えた。

頑張ってはいるのだけど大事な局面で流れを持ってこれない。それが弱みというか“持ってなさ”というか。阪神の1つの特徴だろうか。「人間味があっていい」のも事実かもしれないが、やはり虎党は阪神の勝利で現実逃避したい。だからこそこれだけの観衆が甲子園に足を運ぶのだ。

苦手にしていた広島に3連勝し、迎えた得意の巨人戦のはずだった。ここで巨人をたたけば2位浮上の目も出てくる。さらに言えば月末の神宮ヤクルト2連戦へ極めてかすかな望みをつなぐ可能性も出たかもしれない。2位DeNAは広島に3連敗している。

だが阪神が1つも勝てないのでは話にならない。この日も3安打の巨人を上回る7安打を放ったが得点に結びつかなかった。先発・西純矢もよく投げたが辛抱できず7回、中田翔に被弾。矢野は「あの四球でしょ」と先頭・丸佳浩を歩かせたことを敗因に挙げた。それは正しいがキャリアを考えれば気の毒だし、打線がもっと援護しなくては。

ここでいつもと同じことを考える。先に動くのが阪神だろうということだ。巨人は1回から走ってきた。1番・坂本勇人が盗塁を狙ったが坂本誠志郎が刺す。8回にも代走・重信慎之介に二塁を狙ったがこれも阻止。決着は1発だったが足技を見せてきた。

対して阪神は最後の9回2死一塁から江越大賀が二盗を決めた。2点差を考えれば微妙な作戦だ。それでもそれが「超積極的野球」。だからこそ、なぜ序盤から足で攻めていかないのかと思ってしまう。

1回の一走・糸原健斗のときはともかく、3回、2死一塁の中野拓夢や6回1死一塁の近本光司。さらにいえば4回の無死一塁の佐藤輝明だって走るときは走っていた。もちろん投手との兼ね合いもあるし、常に走れるはずはない。それでも持ち味を出さずに負けるのは面白くないのだ。

巨人も息を吹き返し、広島だって踏ん張っている。クライマックス・シリーズに進めなければ28日で今季が終わってしまう。次週の上位対決はその正念場だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対巨人 巨人に敗れた矢野監督(左から2人目)はファンに頭を下げる(撮影・上田博志)
阪神対巨人 巨人に敗れた矢野監督(左から2人目)はファンに頭を下げる(撮影・上田博志)
阪神対巨人 8回裏阪神1死、中野(左)が空振り三振した後、確認のため、ベンチを出る矢野監督(撮影・狩俣裕三)
阪神対巨人 8回裏阪神1死、中野(左)が空振り三振した後、確認のため、ベンチを出る矢野監督(撮影・狩俣裕三)
阪神対巨人 1回表巨人1死一塁、捕手坂本は一走坂本の二盗を刺す。打者は丸(撮影・上山淳一)
阪神対巨人 1回表巨人1死一塁、捕手坂本は一走坂本の二盗を刺す。打者は丸(撮影・上山淳一)