負けていれば今季の優勝が消滅していた試合に阪神は勝った。「9・15」はあの03年に闘将・星野仙一の下、炎のように戦って悲願のリーグ優勝を決めた日。たとえ優勝はないとしても、その日を前にV逸決定は避けたかったし、なにより3位争いの相手・広島を下したのには意味があると思う。

目立ったのは間違いなく梅野隆太郎だ。二塁打、適時三塁打にホームへのヘッスラ。そして得意のブロックと魅力をあますところなく見せつけた。さらに糸原健斗も光っていたと感じる。2安打に犠飛と持ち前の渋さで貢献した。

いずれも現在のチームでは最年長格。ベテランというには少し若いが、それでも現状ならそういう位置づけだろう。指揮官・矢野燿大の最終年。結局、最後はこういう面々に頼るのか、という感じもする。個々のファンもいるし、それが悪いわけではないが独断で言わせてもらえれば、少しだけ物足りない気もする。

ズバリ、佐藤輝明だ。この試合、1回の四球、さらに逆転に成功した6回の左前打と勝利に貢献したのは間違いない。間違いないけれど佐藤輝の潜在能力というものを考えれば、もっと欲張りたいではないか。

1回に佐藤輝がガツンと勝ち越し2ランを放っていれば、早々に広島の息の根は止まったはず。「そんなうまいこといくか」「いつも打てるか」。そういう声もあるだろう。当然だ。それでも佐藤輝にはそれを期待したい。それができる選手だからだ。

最近、印象的な出来事があった。ここ数日で引退を決めた福留孝介、糸井嘉男と左打者の大先輩がそろって佐藤輝に同じエールを送っていたことだ。「練習たくさんしろよ」(福留)。糸井は「もっと練習しろ!」。糸井のは冗談ぽくはあったが伝えたい気持ちは同じだろう。

誰にもマネのできない才能が佐藤輝には間違いなくある。その才能をここ一番で発揮するためには…。日米のレジェンド・イチローの名前を出すまでもなく、過去に見てきたスターたちはみんな、あきれるほど練習してきた。

もちろん佐藤輝も練習しているだろう。だけど先輩2人から「練習」という同じフレーズが出た。これはまったくの偶然…というわけではないと思う。このオフから来季へ。もちろん今季の残り試合も同じだ。いつか優勝争いで本塁打する佐藤輝を見たい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対広島 ヒーローインタビュー後、笑顔で記念撮影する梅野(左)と岩崎(撮影・上山淳一)
阪神対広島 ヒーローインタビュー後、笑顔で記念撮影する梅野(左)と岩崎(撮影・上山淳一)