「9連戦やしな、移動もあってみんな疲れてると思うけど、なんとか、あと2試合頑張ろうや」。試合前のミーティング。指揮官・岡田彰布はナインに向かって、そんな内容の訓示をしたという。
「まあ、めずらしいことだわな」。それを明かしたヘッドコーチ・平田勝男はそう言った。面白い談話も飛び出すが基本、寡黙な指揮官。その口から“異例のゲキ”が飛んだという。しかし、勝利には結びつかなかった。
その9連戦はここまで8試合を終え、3勝4敗1分けの借金1。交流戦そのものも4勝6敗1分けで借金は2になった。今季の交流戦は12球団がダンゴ状態になっているとはいえ、最下位タイである。ここまで好調だった今季、陰りが見えてきたのかという印象を受けるかもしれない。
なにしろ「3連敗なし」「土曜デーは無敗」そして「無敗の左腕・大竹耕太郎」とここまで続いた「不敗神話」も一気に崩壊。いくら好調でも、どこかで失速の不安を感じている虎党にすればいやな感じだろう。
だが独断と偏見で言わせてもらって、まだ、それほどの大事ではないはずだ。岡田は以前に「シーズンに何回か5連敗ぐらいするよ」などと話していた。いつも書くが優勝するチームでも50敗以上はするのだ。
重要なのは「負け方」というか内容だろう。岡田は「交流戦に入ってからバント(犠打)ができてないやろ」と話していた。そこで、この試合である。9番に捕手を入れる当初の構想通り、坂本誠志郎をそこに置いて臨んだ。
すると坂本は3、5回にきっちり犠打を決めた。もちろんノイジー、佐藤輝明の主軸に当たりが出ないなど楽観できないこともあるが、やるべきことはやっていると言えるだろう。
なにしろ勝負は紙一重だ。この試合、目立ったのは日本ハムの好守だ。5回、木浪聖也を本塁で刺した万波中正の強肩。7回2死一塁では松本剛が左翼線を襲う坂本の打球を横っ跳びでキャッチするビッグプレーも飛び出した。かつての新庄剛志が乗り移ったかのようなプレーの連続だった。
「やることはやっている。勝敗は仕方ないけどしっかりした野球はできていると思うよ。監督の言ったことに対する気持ちも選手から伝わってきたね」。平田はそんな話もした。だからこそ9連戦のラストは勝って締めたい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)