この試合で指揮官・岡田彰布は佐藤輝明をスタメンから外した。「そんなん試合出られへんようなるよ。そら。あんなことしてたら」…。勝利後にそう話した理由は前日15日のことだ。
敗戦後、岡田は攻守において佐藤輝に不満を示した。守りでは4回1死一塁で7番打者・デビッドソンの三ゴロを失策。「ゲッツー取っといたら…」とボヤいた。さらに突っ込んだのは攻撃面である。
2点を追う8回無死二、三塁で空振り三振に倒れたことに怒った。「内野うしろに下がってて。何を打ったらエエの? 二ゴロ打ったら1点差で1死三塁やで。そういう状況の打ち方もできないいうのは、これはもうちょっとあかんわな」。そう話したのである。
これで思い出したのは4年前のことだ。19年5月29日の巨人戦(甲子園)。この試合、高山俊が同点の延長12回に「代打サヨナラ満塁本塁打」を放っている。「伝統の一戦」でのサヨナラ満塁弾は過去にあったが代打では初めてだった。
もちろん快挙には違いない。しかし少しだけ気になったことがあった。「状況」だ。負けのない延長12回裏の攻撃で1死満塁。打者は何をすべきか。安打、四球を選ぶのは当然として併殺を避けるのも大事だ。もっと言えば本塁打を打つ場面だったのか、と思った。
後日、当時の指揮官・矢野燿大に聞いてみた。最高の結果とはいえ、あそこで本塁打はどうなのか、と。矢野は言った。「なんでですか。サヨナラ本塁打、いいじゃないですか。スカッとしたでしょ」。
当たり前だが矢野もこちらの言いたいことは理解していた。それよりも思い切った打撃での結果を評価したのだ。「挑戦した失敗は責めない」と話し、選手に寄り添う姿勢を示した矢野ならではの言葉と思う。
はっきり言って、岡田は違う。野球が好きで同時に勝つということに最大の価値を見いだしている。やるべきときにやるべきことをしないと不満を示す。今回の“注文”も佐藤輝のようなタイプには難しいかも…とは思うが「野球脳」を持て、ということだろう。
この試合、代わりに「3番・三塁」で起用した小野寺暖は5の0。結果とは関係なく、岡田はしれっと佐藤輝を起用すると思う。「教育」はしたのだから。そこが岡田の面白さでもある。佐藤輝が欠場した試合で阪神は勝ち、優勝マジック「29」が点灯した。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)




