先月12日夕方のこと。DeNA戦が行われた甲子園球場は関係者用食堂「蔦」の周辺だ。メニューを見たりしながらウロウロする外国人がいる。「誰かな」と思ったらバウアーだった。

オリックスとの交流戦があった6月の京セラドーム大阪では、観客のいる通路に現れたという話を聞いていた。「今度は甲子園見学かな」とほほ笑ましい気分になった。声をかけようかと思ったが、その日に先発登板することを思いだし、あわてて控えた。

その試合、阪神は勝ったもののバウアーに黒星はつけられず、2戦で1敗。この試合、3度目の対戦で初めて土を付けた格好だ。

それにしても敵ながらあっぱれだった。この試合、一番目立っていた。好投はもちろん、ファンをあおるポーズもプロらしい。以前、DeNA守備陣のまずい守備が出たとき、大声を上げて怒ったことがあった。それを評価したのは広島3連覇監督・緒方孝市(日刊スポーツ評論家)だった。

「ああいう選手は、今、なかなかいませんよ。味方にカツを入れられる存在というか。行動に賛否はあるかもしれませんがボクは好きですね」。雑談の中でそんな話をしていた。サイヤング投手で来日しているのも異例だが、それに恥じない投球内容、ガッツを見せているのは素晴らしい。

そして阪神は、そのバウアーにうち勝った。アントニオ猪木は「相手の持てる力を存分に出させてから、勝つ」というポリシーだったと思うが、DeNAファンを盛り上げるバウアーのエネルギーをまるで自分のものにしたような感じで虎党を沸かせたのである。

前日の試合後、木浪聖也が1人で通路を歩いていた。「ヒマやろ?」と言ってみる。2試合連続で小幡竜平に遊撃のスタメンを奪われていたからだ。「ヒマっすわ!」。木浪はそう返してきた。試合に出たくて仕方がないのだ。そして、この日、2回にバウアーから先制適時打を放った。

2安打の佐藤輝明にしてもそうだ。不振もあり、いろいろ言われるが「見とけよ」と思っているに違いない。完封勝利の伊藤将司も燃えたはず。大投手に負けるかと向かっていき、適時打まで放ったではないか。

出る選手がチャンスを待ち焦がれたように暴れる。ルーキー森下翔太もこういう姿に刺激を受けてほしい。これがプロだ。優勝にひたひたと近づくチームの姿だ、と思う。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

DeNA対阪神 完勝に笑顔でナインを迎える岡田監督(中央)(撮影・浅見桂子)
DeNA対阪神 完勝に笑顔でナインを迎える岡田監督(中央)(撮影・浅見桂子)
DeNA対阪神 4回表阪神2死三塁、伊藤将は中前適時打を放つ。投手バウアー(撮影・浅見桂子)
DeNA対阪神 4回表阪神2死三塁、伊藤将は中前適時打を放つ。投手バウアー(撮影・浅見桂子)
DeNA対阪神 3回表阪神2死一塁、大山に右前打を許し、打球を見つめるバウアー(撮影・浅見桂子)
DeNA対阪神 3回表阪神2死一塁、大山に右前打を許し、打球を見つめるバウアー(撮影・浅見桂子)