日本シリーズ進出に向けて阪神が戦う相手は広島かDeNAか。いよいよ始まったCS第1戦は延長11回、広島・秋山翔吾がサヨナラ打を放ち、2位の意地でファイナル進出に王手をかけた形となった。

シーズンと違う短期決戦に加え、両軍先発が広島床田寛樹、DeNA東克樹とリーグを代表する左腕。「これぞ真剣勝負」というムードの試合はロースコアで延長にもつれ込む接戦となった。その最後は本拠地開催、地の利を生かした広島の粘り勝ちだ。

目を見張らされたのが広島の“足攻”である。1点ビハインドの8回、先頭のデビッドソンが四球で出ると、広島指揮官の新井貴浩はすかさず代走に羽月隆太郎を送った。続く代打・矢野雅哉は初球で犠打を決め、1死二塁。打席には経験豊富な菊池涼介を迎え、ここが正念場と思ったその初球。ここで羽月がズバッと三盗を決めるではないか。

これで1死三塁。マツダスタジアムが最高潮に盛り上がる中、菊池は1-1からの3球目を投手前にスクイズ。これが決まり、広島が追いついた。無死一塁からわずか2球で1死三塁として、無安打で同点に。これで流れは一気に広島に傾き、サヨナラ劇に結びついたと言える。

その場面を広島のヘッドコーチ・藤井彰人に問うてみた。言うまでもないが、新井の右腕として働く元阪神の「男前」である。あんな場面で、なぜ、ああまでスパッと走れるのか。

「まあまあ、ね。そこは準備の段階からはありましたけどね。それにしても今年の阪神は強かったですわあ!」。こちらを十分、理解した上で話す藤井。作戦に絡む部分なので当然ながらハッキリと口にはしてくれないが、自信ありげな様子だ。

広島が勝ち上がれば、ファイナルでも当然、こんな仕掛けをしてくるはず。「まあ…。なかなかね。阪神は簡単にスキは作らないと思いますけど。どっちにしても大量点は期待できないので」-。

歴史的に見て機動力には定評がある広島、今季のチーム盗塁数は「78」でリーグ2位。トップは阪神の「79」だ。しかし阪神が広島戦で決めた盗塁が「10」なのに対し、広島のそれは「15」と上回る。なによりファーストステージ突破を目指すヒリヒリした場で手応えをつかもうとする姿は、じっと待つ立場の阪神にとって不気味な気がするのだ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

広島対DeNA 8回裏広島1死三塁、菊池のスクイズで生還する羽月(撮影・梅根麻紀)
広島対DeNA 8回裏広島1死三塁、菊池のスクイズで生還する羽月(撮影・梅根麻紀)
広島対DeNA 8回裏1死三塁、菊池の投前スクイズで生還した代走の羽月(右)を迎える新井監督(撮影・前岡正明)
広島対DeNA 8回裏1死三塁、菊池の投前スクイズで生還した代走の羽月(右)を迎える新井監督(撮影・前岡正明)