阪神の甲子園主催試合で今季最少は6月5日のロッテ戦(甲子園)で3万6780人だ。これで「最少」なのもすごいが阪神関係者が言われ、うれしかったのはこういうことだという。

「2日でこれだけ売れるなんて考えられない」。阪神の営業関係者があるパ・リーグの同じ立場にいる人物から聞いた言葉という。ロッテ戦は同2日、金曜日から週末3連戦の予定だった。だが2日は雨天中止。そこで予備日の5日(月)に試合があったのだが、こういう場合、観客は入らないのが普通だ。販売期間が短いのが大きな理由で今回も3、4日の2日間しかなかった。その2日間で3万6780人を売った-。それを「考えられない」と言ったという。

291万5528人。今季の観衆が12球団トップなのは言うまでもないが、とにかく勢いがよかった。異例とも言えるのは4、5月のナイターから大入りが続いたことだ。「夜はまだ肌寒い時期のナイターは入らないのが普通なのに」。球団営業関係者はそう話す。その勢いのまま、優勝が確実になった終盤はさらに動員の勢いは増した。

そんなシーズンで球団が感じているのは虎党の中で“世代を超えた融合”が起こっている点だという。「60代などのオールド・ファンの来場が増えると同時に20代の人も増えている」。

大きかったのは指揮官・岡田彰布の復帰だろう。85年の日本一メンバー、05年の優勝監督。もっとも有名な阪神OBが再び指揮を執ることで古い虎党の期待が高まった。その一方、佐藤輝明、中野拓夢、あるいは森下翔太と特徴ある若手が多く出てきた。こんな面々に引っ張られ「弱点」と言われてきた若い女性ファンも増加しているという。

リーグ3連覇を果たしたオリックスの人気は間違いなく上がっているが阪神のそれも同時に上がっている。オリックスにすれば、こんな存在が近くにいるのは気の毒な気もするが、関西決戦の日本シリーズが盛り上がったように、関西の強豪同士として今後もしのぎを削っていけばいい。

「息抜きもトレーニングもしたいやろけど、ファンにお礼を言おうや」。パレードを前に岡田が選手に伝えたかったのはそういうことだ。そしてファンからも「ありがとう」と伝えられ、選手も虎党も日本一を喜びあった。空は晴天。いい1日になった。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

【イラスト】阪神&オリックス11月23日同日優勝パレードマップ/大阪ルート
【イラスト】阪神&オリックス11月23日同日優勝パレードマップ/大阪ルート
愛日小学校同窓生と同級生から阪神・岡田彰布監督へ贈られた横断幕(撮影・村松万里子)
愛日小学校同窓生と同級生から阪神・岡田彰布監督へ贈られた横断幕(撮影・村松万里子)
優勝パレードを終え、インタビューの終わりに「パインアレ」(パインアメ)を食べる阪神岡田監督(撮影・藤尾明華)
優勝パレードを終え、インタビューの終わりに「パインアレ」(パインアメ)を食べる阪神岡田監督(撮影・藤尾明華)
優勝パレードで、沿道のファンに手を振る(左から)阪神坂本、木浪、佐藤輝(撮影・藤尾明華)
優勝パレードで、沿道のファンに手を振る(左から)阪神坂本、木浪、佐藤輝(撮影・藤尾明華)