今更だが少し気になることがあった。阪神の宜野座キャンプ、コーチ陣、そして選手は普段とは違う帽子をかぶっている。THマークの横にヤシの木のイラストをあしらい、つばの部分は幾何学模様のような黒と黄色のデザイン。いわゆる「キャンプ帽」だ。

気になったのは指揮官・岡田彰布だけがこれをかぶっていないこと。練習を見守っているとき、普段の黒い帽子のままである。なぜ監督だけ違うのか? 本人に聞いてみた。

「そんなん前からやろ、おまえ? 監督はあれはかぶらへんで」。シンプルな答え。少しだけ聞いてみると意外? な事実が分かってくる。

そもそも昨年までキャンプ帽子はコーチだけが、かぶっていたもの。選手がかぶるのは今年からだ。だから余計に1人、かぶっていない岡田が目立つ結果になって気になったのかと、勝手に納得する。

元々は“宜野座元年”である03年に闘将・星野仙一が取り入れたものだ。「キャンプはコーチが主役やろ。コーチがどこにいるかすぐ分かるように帽子を変えろ」。02年に阪神監督に就任した星野は2年目の春季キャンプを宜野座に移したタイミングで実行した。

そういえば当時、そんな話をしていたな…と、記憶力の衰えに驚いたのだが、では選手はなぜ今年からかぶっているのか。これはキャンプ帽子がメッシュ素材で涼しいため、選手側から要望が出たことに応えた結果という。

いずれにせよ「キャンプの主役はコーチ」という考えは岡田も同じだ。選手をどう成長させるか。そこにポイントが置かれる。特に今年は佐藤輝明を守備から鍛えるため、内野守備走塁コーチ・馬場敏史は懸命だ。この日も特守でノックを打ち続けた。

「(佐藤輝は)だいぶよくなってきたよ。下半身で送球できるようになってきた。すぐ“横着”するけどね。とにかく悔いが残らないようにやらせてあげないとね。どこまでサポートできるか、ですよ」

今月10日に59歳の誕生日を迎えた馬場も結構、疲れている。「こっちもきついですよ。老体にムチ打ってやってますわ(笑い)。食事が終わるとバタンキュー。でもトシのせいかすぐ目が覚めるのが悲しいねえ」。

連覇へ向け、それぞれの努力が続く日々。きょう17日は全員そろいの黒帽子をかぶって楽天戦である。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

10日、走塁練習を見つめる阪神岡田監督
10日、走塁練習を見つめる阪神岡田監督