ちょっとお目にかかれないような試合展開だ。5点リードした8回の守りで4失策が出て、6失点の逆転負け。シーズンなら怒髪天をつくところかもしれないが、そこは勝敗は関係ないオープン戦である。

「普通はあんなこと起きひんけどなあ。何も言わん方が気が引き締まるんちゃうか。ごちゃごちゃ言わん方が」。岡田彰布監督もそう苦笑するしかなかった。そんな指揮官と正反対に怒りを見せていたのはヘッドコーチの平田勝男だ。

「1軍で試合に出てる選手があれではな。ジャッジができてない」。いつもの柔和な顔と違って、今にも噴火しそうな勢いで話した。現役時代、自身のポジションでもあった遊撃の小幡竜平に対して、だ。

問題の8回は小幡のプレーから始まっている。桐敷拓馬が簡単に2死を取った後、ヤクルトの打順は9番の育成選手・岩田幸宏に回った。その打球は小幡の前で高いバウンド。これが一塁に生きる内野安打になった。その後に小幡は送球ミスと打球を弾くミスの2失策をおかしているが、平田が怒ったのはここだ。

「足が速いから試合に出てる選手なワケやろ? それがあの打球で。もっと前に出てきて、トライせないかんよ。投げミスとかはじくとか、そんなのはもう話にならんけど、それ以前にそういう気持ちでなかったらあかんよ。トライせな、あんなの!」

現状は木浪聖也と遊撃の位置を争う立場の小幡。しかし木浪は昨季、大きく活躍しており、優位は動かない。だからこそ若い小幡にはチャレンジして、アピールしてほしいところ。そういう姿勢が見られなかったところにいら立ちを感じたようだ。

「守りに入るな」ということだろう。これはチームすべてに言えることかもしれない。昨年の日本一からの新たなシーズン。ともすれば「同じように…」と思うが、そうではなくチャレンジが特に若い人には重要ということだろう。

8回で救いだったのは投げていた桐敷が冷静だった点か。「失策絡みもありましたけど、四球もあったので反省するところも。ミスはしゃあないと思ってますし、カバーできなかったのは自分なので」。前川右京の右邪飛の落球から乱れたように見えたが、そこを自身の反省点にあげていたことだ。若いチーム、挑戦と反省を続けて開幕に臨んでほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対ヤクルト 8回表ヤクルト2死満塁、浜田の打球を落球する阪神中堅手森下(撮影・藤尾明華)
阪神対ヤクルト 8回表ヤクルト2死満塁、浜田の打球を落球する阪神中堅手森下(撮影・藤尾明華)
阪神対ヤクルト 8回表ヤクルト2死一、二塁、小幡は北村恵の打球を後逸(撮影・上田博志)
阪神対ヤクルト 8回表ヤクルト2死一、二塁、小幡は北村恵の打球を後逸(撮影・上田博志)
阪神対ヤクルト 8回表ヤクルト2死一、二塁、小幡は北村の打球を後逸し適時失策で勝ち越しを許す(撮影・加藤哉)
阪神対ヤクルト 8回表ヤクルト2死一、二塁、小幡は北村の打球を後逸し適時失策で勝ち越しを許す(撮影・加藤哉)
阪神対ヤクルト 8回表ヤクルト2死一塁、増田の右邪飛を捕球出来無い前川(撮影・加藤哉)
阪神対ヤクルト 8回表ヤクルト2死一塁、増田の右邪飛を捕球出来無い前川(撮影・加藤哉)