阪神にとって「24年オープン戦初星」の勝利投手は村上頌樹となった。村上が最後に1軍で投げたのは2週間以上前の2月24日ヤクルト戦(浦添)。そのときは3回1失点だったが、ここでこう書いた。

独断で言わせてもらって、もう開幕投手は村上で間違いない-。結果として“外れ”となった。申し訳ないというか、読みが浅かったと反省である。指揮官・岡田彰布は開幕投手に指名した青柳晃洋について、先日「正月から決めてたよ」と言った。そこについてだけは今でも「どうやろ」と思っているのだが、外れは外れである。

「読みが浅かった」と言うのは岡田の性格というか思考を甘く見ていた気がするからだ。なにしろ日本一に輝いた昨季のMVPを獲得した村上。「(調子の)エエもんから行くよ」という岡田にすれば、この右腕を起用しない手はないと思った。だが、もう1つの“こだわり”を忘れていた。

そこについて示唆してくれたのは村上にとって高校時代の恩師となる人物だ。智弁学園の野球部監督である小坂将商である。先日、小坂と少しだけ話した。そのとき「開幕は村上と思っていたんですが…」と言うと彼はこんな話をした。

「いやあ。開幕投手は青柳とか、あるいは西勇輝とか実績ある投手、ベテランが務めたらええんちゃいますか。きっと岡田監督もそういう考えでしょう」

阪神に関わっていないにもかかわらず、こちらよりも岡田の思考をしっかり読んでいた。プロ、アマに関係なく指導者の心理というものがあるのだろう。

節目では実績のある選手を尊重する。チームを率いる上で重要なことだろう。こうすれば青柳も「よっしゃ!」と思うだろうし、村上にすれば、特段、何で? とも思わないはず。老練な岡田の起用法だ。

「なにより大事なのは1年間、ローテーションを守ることでしょう。それが一番ですよ」。小坂はそんな話もした。その通りだ。実質2年目となる村上にとって今季は重要なシーズン。勝敗そのものは打線との兼ね合いもあるが、安定した投球を1年間、続けられるか。そこが、まさにエースへの道だろう。

今後、問題なければ村上の今季初登板は2カード目、4月2日DeNA戦(京セラドーム大阪)が有力。チームの1週間を占う重要な「火曜の男」として、チームを引っ張ってほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ロッテ対阪神 試合に勝利した阪神岡田監督(左)は村上をタッチで迎える(撮影・足立雅史)
ロッテ対阪神 試合に勝利した阪神岡田監督(左)は村上をタッチで迎える(撮影・足立雅史)