開幕連敗の重い雰囲気を振り払うには、やはり本塁打だ。なんせ東京ドームだし。ここはイキのいいスイングを誇る森下翔太に期待だ。前日、ここでそう書いたら本当に打った。「的中」などと胸を張る気はさらさらないがゾクッとしたのは否定できない。

そんな勝利の中、渋く光ったのはスタメンマスクの梅野隆太郎だろう。真っすぐ、フォーク主体の先発・才木浩人から桐敷拓馬、新加入ゲラ、さらにクローザー岩崎優の4投手を受け、巨人を0封した。

若いチームにあって32歳は野手最年長だ。それでも3回2死満塁、打者・岡本和真というピンチでワンバウンドする才木のフォークを体で止め、最後は空振り三振に切ったのは「梅野復活」を感じさせた。

「才木がよく粘ってくれた。あれで勝ちを取れたと言っても過言ではないぐらい、頑張ってくれた」。その場面、梅野自身もそう手応えを感じた様子だ。

昨年8月13日のヤクルト戦(京セラドーム)、その第3打席で死球を受け、左尺骨骨折。そのまま戦線離脱となった。そのためリーグ優勝も、日本一も戦力として見届けることはできなかったのだ。この試合は公式戦として、それ以来のスタメンマスクだった。

「まあ…。こればっかりは仕方ないです。また頑張ります」。昨シーズンの終盤、その不運について聞いてみると淡々と話した。そういうあっさりした性格が梅野の魅力だと思っているが、プロは簡単ではない。昨年はその表情が険しくなることもあった。

リード面などが高評価される坂本誠志郎が台頭。結果、勝敗などで周囲から対比、比較され、批判されることも増えた。人当たりのいい男の表情が陰ることが増えていったのも事実だ。

それでもこのキャンプは笑顔が多かった。理由を問うと「肩の調子がいいんですよ。あまり言ってなかったけどここ数年、痛かったので」。だが、その痛みがまた発症。不運が続くと思ったが、なんとか開幕に合わせてきたのである。

「ホント、しのいで、しのいで、で。紙一重じゃないですか」。指揮官・岡田彰布は振り返った。しのぎ合いに捕手の力は重要。そして言うまでもなく阪神に梅野、そして坂本のコンビは欠かせないのだ。球団初の連覇へ初白星。次は貯金へ。梅野、そして坂本で阪神自慢の投手陣を引っ張っていってほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

巨人対阪神 2回表阪神2死、左前打を放つ梅野(撮影・江口和貴)
巨人対阪神 2回表阪神2死、左前打を放つ梅野(撮影・江口和貴)