「ようさん、おるなあ…。ええ…?」。敗戦後のベンチ裏。そこにゆっくりと姿を現した指揮官・岡田彰布の第一声だった。

京セラドーム大阪とはいえ、めでたい本拠地開幕。球団初のセ・リーグ連覇を狙うシーズン、地元ファンに幸先のいい船出を見せたい思いはあったはず。注目度が高いのは知っている。報道陣が多くなるのも同様だ。それでもそこで思わず口をついた「ようさん(たくさん)おるな」という言葉はなんとも言えないモヤモヤを表現していたのではないか。

それだけ痛い敗戦だったということだ。昨季MVP・村上頌樹の見たこともないような1回の乱れっぷりはもちろん、「ゲッツーやろ」と言った佐藤輝明の失策にもガックリきた。

だが、それ以上に岡田をイライラさせたのは相手の戦いぶりでもあったかもしれない…と予想する。ライナーでの走者飛び出しなどもあったが、象徴的なのは村上が5点目を失った3回だったのではないか。

1死満塁から石上泰輝の一ゴロを大山悠輔が本塁に送球し、生かしてしまう野選。DeNA側のリクエストで判定が変わった場面だ。なお1死満塁で打席は投手ジャクソンにまわった。阪神ならこの場合、どうするか。間違いなく「いらんことするな」だ。突っ立ったままで見逃し三振すれば2死満塁で、売り出し中の度会にまわる。

「そんなとこで投手が打ったりしてゲッツーとかなったら最悪やろ」。以前、野球談議をする中で岡田はそんな話をしていた。そして、ここで、まさにそんな場面が展開されたのだ。フルカウントから打って出たジャクソンは遊ゴロでホームゲッツー…。

DeNA側の考えは分からないが、やってはいけないという形を阪神サイドからすれば、物の見事にやってくれたのである。ハッキリ言って昨季の阪神なら、ここでつけ込み、逆転できていたように思う。

だが今はチーム状態がよくない。特にクリーンアップである。木浪聖也の1号ソロを含む8安打を放ったものの森下翔太、大山悠輔、そして佐藤輝明が不発。これでは付け入ることはなかなか難しい。

「もうちょっとはよな、1点ずつでも、追加点取れたらよかったけどな」。村上の後を受けたブルペン3投手は無失点でしのいだ。それだけに岡田も歯がゆい。簡単にはいかないシーズンを予感させる敗戦だ。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対DeNA 4回表、選手交代を告げる阪神岡田監督(左)(撮影・前田充)
阪神対DeNA 4回表、選手交代を告げる阪神岡田監督(左)(撮影・前田充)