「宣誓。いま、令和という時代の幕が開け、高校野球も101回目という新たな歴史の1歩を踏み出します。昨年、一昨年は豪雨災害のため開会式を経験することはできませんでしたが、今年わたしたちは3年間で初めて開会式に臨むことができました。この胸の高鳴りは一生忘れません…」。

 第101回全国高校野球選手権福岡大会が6日、北九州市民球場で開幕した。東福岡・井村岳(たける)主将(3年)が選手宣誓を行うと、球場内から大きな拍手が沸き起こった。おととし2017年は九州北部豪雨、昨年2018年は西日本豪雨。2年連続の大災害により、3年ぶりの開会式となった福岡大会。井村は「当たり前のことが当たり前のことではない」という感謝の思いと、復興への願い、そして初めての「胸の高鳴り」を言葉に込めた。

「(自己採点は)高めに言って90点。想像していた以上に観客がいて最後まで言い切れるか不安でした。あとは試合に集中します!」。この日に向けて寝る前に毎日1回口ずさむなど、100回以上は練習してきたという令和初の選手宣誓。やり切った顔に達成感があふれていた。


■神宮大会優勝の2000年秋も、東福岡が選手宣誓


 「令和の時代を築く!」。

この宣誓にはチームの決意も込められていた。東福岡と言えば、村田修一(巨人2軍コーチ)を始め、田中賢介(日本ハム)、吉村裕基(ツインズ・オーステルハウト)らこれまで12人のプロ野球選手を輩出。1998、99年の夏2連覇を含む甲子園出場全6回(春2夏4)を平成の時代に果たし、強豪校として一時代を築いてきた。しかし近年は2007年夏を最後に甲子園から遠ざかっており、井村主将は「平成は『ヒガシは勝って当たり前』とみられていた時代。もう一度あのころの強さを取り戻し、僕らの代から再び時代を築けるよう頑張りたい」と燃えている。目指すのはもちろん「令和元年優勝」だ。

 

 ゲンもいい。東福岡が夏の福岡大会で選手宣誓をするのは初めてだが、過去をひも解くと2000年秋の九州大会、神宮大会で、当時の福原佑二主将が宣誓を行っている。このとき東福岡は2大会連続で優勝達成。神宮大会で「全国制覇」を手にした。エースは下野輝章。9番打者ながら、2001年センバツで大会史上初(当時)の「3試合連続本塁打」を記録した選手だ。現在の、その下野が監督を務めており、今夏3度目の采配を振るう。

「越えられない…。そう思いました(笑)」

井村は高1のときにセンバツ動画で下野監督のプレーを見つけ、投打にわたる活躍に目を奪われた。センバツ時の2001年は、井村ら現3年が生まれた年。下野監督の偉業はYOUTUBEでしか知ることができないが、改めて東福岡の黄金時代を感じたという。

「下野先生のような活躍はできないかもしれませんが、全員野球で最後まで食らいついて甲子園に行きたい。『選手宣誓からの優勝』は良いゲン担ぎになります。自分はサードコーチャーとして適格な状況判断を仲間に伝えたい」。

 

今年の東福岡は52人もの新入生が入部した。現在の部員は118人。下野監督は「人気の高まりに、復活への期待感を感じています」と話す。平成から令和へ。選手宣誓の勢いに乗って、新しい歴史のスタートをヒガシの名で刻む。【樫本ゆき】