1924年の第1回センバツ(選抜中等学校野球大会)で優勝した春夏4度の甲子園優勝を誇る“レジェンド校”、高松商(四国・香川)が初の決勝進出を果たした。37年ぶりの出場で、優勝候補の大阪桐蔭(近畿・大阪)を破り、日本一に王手を懸けた。

 今大会唯一の公立校が、古豪復活を証明した。終盤に1点差まで詰め寄られたが、12安打7得点で一時は6点リードを奪った。中学での硬式野球経験者はベンチ入り18人中3人だけ。就任2年目の長尾健司監督(45)は「20回やって1回勝てるかどうか。低いゴロを打ってつなぐ、うちの持ち味が出せた」と喜んだ。

 「うどんパワー」で打線が爆発した。1番安西翼外野手(2年)は、今大会の遠征前に母千晶さん(48)が作った郷土料理「しっぽくうどん」を食べてパワーをつけた。大根、ニンジン、里芋など野菜たっぷりの大好物で、今大会2試合で10打数6安打と絶好調。この日も2打席連続の三塁打など4安打5得点に絡んだ。50メートル5秒9の快足の持ち主は「大阪桐蔭といい試合ができたらいいな、くらいに思っていた」と驚きを隠さなかった。

 緊急事態も乗り越えた。四国大会4試合を完投したエース浦大輝(2年)が前夜からウイルス性腸炎を発症。下痢と発熱で、メンバー交換30分前に「無理です」と訴えてきた。長尾監督は急きょ、多田宗太郎(2年)を先発マウンドに送り、暗示をかけた。「大阪桐蔭は緩いボールに弱いといううわさがある」。高校入学後に横手投げに転向した右腕は、120キロ台前半の直球に100キロ前後のカーブを織り交ぜて7回まで3失点と持ち味を存分に発揮した。「打たれたら仕方ないので、プレッシャーはなかった。勝ててうれしい」と喜んだ。

 96年夏の甲子園以来の全国舞台で、優勝候補を破った。創部106年の伝統校は、2年前にOB会が資金を募り室内練習場が新装された。祖父忠之さん(77)も同校で甲子園に出場している安西は「大阪桐蔭に勝ったことを自慢しないで、謙虚に戦いたい」と引き締めた。今春センバツ優勝の敦賀気比も撃破し、頂点まで駆け上がる。【鹿野雄太】