沼津東(静岡)が聖隷クリストファーとの開幕戦を6-4で制した。2年エース佐竹陽希が5回に緊急降板も、捕手の山田裕介主将(3年)が、リリーフした渡辺光洋(2年)高橋良輔(3年)を好リード。9回に宮川和也(3年)が同点打を放ち流れをつかむと、そのまま一気に逆転した。「沼東らしい」伝統の全員野球で、夏1番星を飾った。

 一、二塁に走者を背負いながら、高橋が相手打者を遊飛に打ち取った。瞬間、沼津東ベンチから選手が駆けだし、三塁側応援スタンドが歓喜に沸いた。あきらめずにつかんだ「沼東らしい」逆転劇。山田主将は興奮のままに言った。「スタンドの皆さんも含めて『全員野球』で流れをつかめた。こうしたゲームを続けていきたいです」。

 先制するも5回までに3点をリードされた。6回表に3-4まで追い上げたが、攻撃を終えてベンチに戻る際、二塁走者だった佐竹が両太もも裏のけいれんで立てなくなった。先発投手の佐竹は序盤から飛ばし、直球は139キロで自己最速を更新。限界にきていたが、山田は冷静だった。「継投はいつものことで慣れています。渡辺がよく粘ってくれた」。緊急登板の渡辺は持ち味の制球の良さを発揮し、2回を1安打無失点。続いた3番手の高橋は、堂々とキレのある変化球を投げ込んだ。

 9回表、高橋が先頭で四球で出塁すると、次打者の大橋泰河(2年)の打球処理で相手二塁手が負傷して試合は約10分間中断。再開しての初球、外角高めのカーブを3番宮川がたたいた。「変化球が多かったので初球から張っていました」。同点適時打にベンチ、スタンドが一気に盛り上がった。さらに一死満塁とチャンスを広げ、6番山田の打球を相手三塁手が失策して勝ち越し。続く高木碧海(2年)も初球スクイズを決め6-4とリードを広げた。

 9回裏、一死後に走者を出したが、高橋が大声援を受けながらの粘投でしのいだ。羽切政人監督(46)は感激の面持ちで言った。「とにかく全員でつなぐ意識でした。選手はほんとに頑張ってくれた」。創部112年の名門が、70年ぶりの甲子園出場へ歩みを進めた。【鈴木正章】