全国高校野球静岡大会を制し甲子園出場を決めた常葉学園菊川が、優勝から一夜明けた28日、森下知幸監督(55)の電撃退任発表が一転続投になるドタバタ劇があった。

 午前9時、森下監督がグラウンドで選手を前に唐突に切り出した。「7月31日をもってやめて8月から御殿場西の監督になります。有終の美を飾れて良かった」。突然の発表に、高校通算48本塁打の栗原健外野手(3年)は「森下さんを日本一の男にすると決めていたので…つらいです」と動揺を隠せず、涙を流す者もいた。森下監督は退任理由について「就任して10年。後進に道を譲りたかった」と話した。

 しかし、本大会前の監督交代は異例で、昼前になると状況は一変した。静岡県高野連が日本高野連に監督交代を打診したところ、地方大会と本大会が一連の大会であることや、選手たちへの影響や教育的見地から「特別な事情がない限り、交代は認められない」との判断が下った。

 そこから学校側が再度、甲子園まで指揮を執るように要請。同監督もこれを受け入れる形となった。午後5時には学校で緊急会見。森下監督は「しっかりリセットし、心を入れ替えて頑張りたい」と、厳しい表情で「続投」を口にした。同席した土屋義人校長も「(インター)ネット上の反響も大きく、事の重大さと責任を痛感しています」と謝罪。新天地となる御殿場西サイドも「ぜひ甲子園に行って采配を振って欲しい」としているが、本大会終了後に同監督を迎え入れる方針は変わらないものとみられる。

 森下監督は06年8月に就任すると「バントなしのフルスイング」で07年センバツ優勝など、同校を全国区の強豪に育て上げた。今日29日から甲子園に向けた練習を再開する。