高校の部は、早実(東京)清宮幸太郎内野手(2年)が復調の2安打で4強入り一番乗りを決めた。東京大会決勝(日大三)で5打席連続三振と苦しめられた左腕のスライダーを打ち、静岡(東海・静岡)に勝利した。

 清宮の圧力が、全国屈指の左腕を粉砕した。初回1死一塁、静岡・池谷のスライダーを右前にはじき返した。3日の東京大会決勝で日大三の左腕・桜井周斗投手(2年)に5打席連続三振した決め球に対応した。ネット裏に集結した全12球団のスカウトの前で、8打席ぶりの安打。「同じ失敗は2度としたくなかった。打ち損じましたけど、久しぶりにヒットが出てよかった」と胸をなで下ろした。

 ひと振りで動揺を誘った。続く4、5番は連続死球で同点。池谷は「警戒しすぎて、自分の投球ができなかった」と悔やんだ。3回は自身が死球を受けて勝ち越しにつなげた。7回には、前の打席で一邪飛に倒れた内角直球をとらえて右翼フェンス直撃のシングルヒット。打球が速すぎた。主将の一打は、勝ち越しの2点を呼び込んだ。復調を示す2安打に「後輩にも『前に飛びましたね!』と、いじられました」と照れた。

 手応えをつかんだのは、安打より死球だった。「デッドボールは良い傾向。内角の直球にのけぞるのは、体が開いているから。肩を開かずにいけた」。今大会前に向けて、和泉実監督(55)と取り組んだ修正課題だった。高校通算75発の大砲は、バットを振らずして自身の状態を把握した。

 周囲の想像を、次々に超えていく。右越え打で出塁した7回、相手の暴投で一気に三塁まで激走。球場はどよめいた。10日の開会式では、壇上で隣だった静岡・小柳廉主将(2年)の足を踏んでしまうハプニングがあった。近くで見ていた他校の主将は「1回だけじゃなく、何度も『ゴメン、ゴメン』と謝っていた。あれだけすごいのに、謙虚なんだと思った」と感心した。

 全国舞台で高い修正能力と意外性を見せた。4強入りは、日本ハム斎藤を擁した前回出場の05年以来だ。明日14日の準決勝は、福岡大大濠-明徳義塾の勝者と戦う。「先のことは考えたくないけど、次につながると思います」。納得の神宮1勝から、40年ぶりの頂点へ突っ走る。【鹿野雄太】