高崎健康福祉大高崎(群馬)が投打で圧倒し、札幌第一(北海道)を11-1で下した。天国へ勝利を約束したエース伊藤敦紀投手(3年)が7回3安打1失点の好投。満塁本塁打含む毎回の16安打を放って大勝した。

 天国に旅立った「健大ファン」に、エース伊藤が白星を届けた。出場校中トップのチーム打率3割8分8厘を誇る札幌第一打線を相手に、7回3安打1失点の好投。「見ててくれたと思うので、結果を出せて良かった」と1勝の重みをかみしめながら「次も勝って、いい報告がしたいです」と決意を込めた。

 突然のことだった。練習がオフだった1月16日、高崎市内の接骨院に、この日3番手で投げた左腕・竹本と訪れ、帰り道に駐車場で倒れている会社員の男性を発見。救命措置や救急車の誘導などを手伝った。その時は一命を取り留めたが、後に亡くなったことを聞かされた。学校を訪れた遺族から渡された手紙には、こんな言葉が書かれていた。

 「健大のファンだったので、センバツで頑張ってください」

 男性は野球が好きで、同校の試合を観戦したことがあることも聞いた。「その人のためにも頑張りたいと思った」。救助に参加した時も「倒れている方が見えたので、自分たちに何かできることがあればと思って」と、竹本と共に動いた。

 今、伊藤にできることは甲子園で活躍する姿を届けること。だから、次も勝つ。【久保賢吾】

 ◆群馬県勢のアベック勝利 前橋育英に続き高崎健康福祉大高崎も勝利。群馬県勢の2校出場は4度目だが、そろって初戦突破は78年桐生3○1豊見城、前橋1○0比叡山(松本投手が完全試合達成)以来39年ぶり2度目。

 ◆毎回安打 高崎健康福祉大高崎が記録。15年の木更津総合(対静岡)以来。

 ◆満塁本塁打 高崎健康福祉大高崎・山下が記録。15年松本(敦賀気比)が大阪桐蔭との準決勝で2打席連続で放って以来23人目(24本目)。学制改革後、2年生では95年太田(関西)11年森下(東海大相模)に次ぎ3人目。群馬県勢では36年石田(桐生中)以来81年ぶり。

 ◆代打本塁打 高崎健康福祉大高崎・上野が記録。13年森川(関西)以来で大会4本目。勝利に結びついたのは81年山根(倉吉北)以来。同じ試合で満塁本塁打と代打本塁打を放ったチームは春夏を通じ初めて。