駒大苫小牧が函館大有斗を6-4で下し、13年以来4年ぶり5度目の春王座に立った。0-4の2回2死から救援のマウンドに上がったエース工藤稜太(3年)が後続を断ち、7回1/3を5安打無失点の好投で、全4試合連続の逆転勝利を呼び込んだ。全試合逆転での優勝は、12年北海以来5年ぶり。駒大苫小牧としては道大会3季15度目の優勝で初となった。投打ともに、やられてもやり返す「カウンター野球」で頂点に返り咲いた。

 駒大苫小牧エース工藤は、最後の打者を左飛に打ち取ると、下っ腹に力を込め「ヨッシャー!」と雄たけびを上げた。2回2死一、三塁から登板。7回1/3のロングリリーフは7奪三振無失点と好投し、流れを変えた。「先に点を取られたが、負ける気はしなかった。こういう緊迫した試合に勝ててうれしい」と喜んだ。

 悔しさが力になった。前日4日の準決勝帯広大谷戦は4回2死から登板も、その裏の打席で自打球が股間を直撃。突き上げる痛みの中、5、6回は「我慢して2回投げましたが、どうしても痛くて」と6回を終え降板し、山彰太(3年)にマウンドを譲った。唯一先発した1日の2回戦札幌第一戦は5回2/3、3失点。2番手鈴木雄也(2年)の救援で逆転勝ちにつながった。「朝には痛みは取れたし、今度は自分がカバーしたかった」。最後の大一番で背番号1がプライドを示した。

 昨秋まで主将も、地区予選で13季ぶりに敗退すると、エースで主将は負担が大きいと大北広樹(3年)に変更された。「まとめられなかった。力不足だった」。冬場は75キロへの体重増ノルマをクリアできずBチームに降格された。「自分を見直す機会ができた。主将としての役割の大変さも分かった。大北を何とか助けられるようにと考えるようになった」。1年秋から主軸として突っ走ってきた男は、ひと冬越え、仲間を気遣える大人に成長した。

 工藤の力投に応え、打線も7回に一挙3点を奪い4戦連続の逆転勝利で頂点に立った。「ダメだ、勝てないと言い続けてきたから、勝つことで自信をつけてくれたら」と佐々木孝介監督(30)。同監督が主将として初の全国制覇を果たした04年夏を含め、全試合逆転は、15度の道大会優勝で初めて。派手さはなくとも、あきらめずチーム一丸で逆境をはね返す新生駒苫で、07年以来10年ぶりの夏の甲子園を狙う。【永野高輔】