最速143キロを誇る八戸学院光星(青森3位)のエース左腕向井詩恩(3年)が復活登板を果たした。3月末に判明した腰椎の疲労骨折から復帰し、明桜(秋田1位)戦に今春初登板初先発。5回3安打4奪三振1失点とまずまずの投球を見せた。試合は3-2で勝った。

 235日ぶりとなった公式戦のマウンドは、心地よかった。昨年10月16日の秋季東北大会準々決勝以来の登板にも動じず、向井は白球の感触を確かめながら1球1球丁寧に投げ込んだ。余力を残して5回1失点で降板し「意外にいい感じだった。楽しかった。もっと投げられた」と自信を見せた。先週の練習試合で3イニングずつ試運転をこなすと、7日の登録変更でベンチに滑り込み、ぶっつけ本番で躍動してみせた。

 3月末に腰椎の疲労骨折が判明し、全治3カ月の診断が出た。「チームに迷惑かけたのが悔しかった」。その間、気持ちを切らさず、粛々とリハビリをこなせたのは理由があった。中3の時、左肘の靱帯(じんたい)を痛め1年間登板できなかった。「その時に比べたら…。(ここまで来られたのは)自分の力じゃない。チームメートに支えられた」と振り返った。

 復帰するまではひとり別メニューをこなし、壁に結び付けたチューブを引っ張って左肘のインナーマッスルの強化に当てた。この日、オリックス・スカウトのスピードガンで最速138キロを計測。向井は「メンタルと制球は、今の方が成長している」と胸を張る。仲井宗基監督(47)も「本来であればもっと球速が出る」と奮起を促しつつ「緊迫した試合で投げられたのは夏につながる」と合格点を与えた。

 向井が離脱していた間、チームは優勝と無縁だった。4月の八戸地区大会決勝は八戸工大一に敗れ、5月の県大会準決勝も弘前学院聖愛に敗れた。「夏に向けて勝ち癖がほしい。東北大会は優勝を狙う」。目標である夢のプロ入りについても「夏に向けて結果を出せれば」と猛アピールを誓った。向井の左腕の真価が問われる。【高橋洋平】

 ◆向井詩恩(むかい・しおん)1999年(平11)4月20日、青森・上北町(現東北町)生まれ。小川原小3年から野球を始め、三沢二中では軟式野球部。八戸学院光星では2年春の地区大会で初ベンチ入り。174センチ、75キロ。左投げ左打ち。家族は母、妹。