室蘭地区では、春季全道を制した駒大苫小牧が12-0の5回コールドで室蘭栄を下し、10年ぶり8度目の夏の甲子園へ、好スタートを切った。林田章吾一塁手(3年)が初回に公式戦初本塁打となる右越え満塁アーチで先制するなど、3打数3安打6打点の大暴れ。父子2代で駒苫の4番を打つ頼れる主砲の一撃で、王者が栄光を取り戻すための1歩を踏み出した。

 駒大苫小牧のスコアボードに、あっという間に「4」が刻まれた。1回無死満塁。林田は1ボールからの2球目、インコースに入ってきた変化球を振り抜くと、打球はグングン伸び、ライトの芝生席で弾んだ。「春の全道で満塁の場面で凡退した。ようやく悔しさを晴らせた」。主砲は会心の笑みを浮かべた。

 昨秋は室蘭地区代表決定戦で鵡川に敗れ、全道大会もセンバツの道も閉ざされた。引退した3年生、同学年の友人、佐々木孝介監督(30)に「自分は何を変えればいいか」を聞きまくった。結論は、中学時代からこだわる1本足打法との決別だった。「体が大きい割に打球が飛ばなかったので、僕には力を(軸足に)ためられる1本足の方が合っていると思っていた」。

 冬場に右足を前に踏み出すフォームに変えた。さらに「ここで1発打つんだ」という場面を想定して、打撃練習を繰り返した。「ホームランの後も(大振りにならず)低い打球のヒットが打てていた。そこに成長が見られた」と指揮官。内角球にバットがスムーズに出るようになり、確実性が増した。誰もが硬くなる最後の夏の初打席で、チームを軌道に乗せた。「甲子園で優勝するため、まだまだ進化する」と誓った。

 父立身(たつみ)さん(52)は83年、駒大苫小牧3年の夏に、4番・中堅手として南北海道大会に出場したが、初戦で桧山北に敗れた。父子2代で主砲を任せられる林田への期待は大きい。「私が届かなかった甲子園の夢をかなえてほしい」と立身さん。明日1日の代表決定戦で静内を破り、まずは父の足跡に並ぶ。【中島洋尚】